弁護士ブログ

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    2015.12.28

    年末年始休業のお知らせ

    当事務所は、12月28日で仕事納めとなり、翌29日から1月4日までお休みをいただきます。

    1月5日(火)より、通常の営業となります。

    それでは、皆様、よいお年をお迎え下さい。

     

    霞が関パートナーズ法律事務所 

    弁護士伊澤大輔

     

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    2015.12.25

    データに関する取引の契約ガイドライン

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    平成27年10月に、経済産業省は、データに関する取引(いわゆるビッグデータを利用した商品開発や、マーケティング活動等を目的としたデータの取引)を活性化させることを目的として、データを保有する事業者(データ提供者)とデータを利用する事業者(データ受領者)が、契約締結時に留意すべきチェックポイントと、契約書のひな形を紹介するガイドラインを公表しました。

    http://www.meti.go.jp/press/2015/10/20151006004/20151006004-1.pdf

     

    有体物が対象となる取引とは異なり、データ自体は目に見えるものではありませんので、それを取引する契約書の作成にあたっては、一般的な契約書とは異なる、特有の留意点があります。

     

    まず、取引の対象となるデータをどのように特定するかという問題があります。これが曖昧だと、データ提供者は過大なデータの提供を求められたり、他方、データ受領者は本来ほしかったデータの提供を受けることができないといったおそれがあります。 

     そこで、対象となるデータの項目や量、どのシステムで、いつからいつまでの間取得されたデータかといったことを明確に定める必要があります。

     

    また、データの提供手段(メール添付によるか等)や、データの形式・仕様(Excelファイルによるか等)についても予め合意し、データ提供者、データ受領者共に、データの変換に係る手間暇やコストを最小限にし、最適なデータを提供できる(受けられるよう)にしておくべきです。

     

    そのほかにも、データ提供者が、提供されるデータの品質をどこまで保証するかや、損害賠償義務の制限といった検討すべき点があります。

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    2015.12.24

    内縁の夫が交通事故により死亡した場合、その内縁の妻に損害賠償請求権を認めた事例

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    今回は、内縁の夫が事故により死亡した場合、その内縁の妻に損害賠償請求権を認めた裁判例(東京地裁平成27年5月19日判決)をご紹介させていただきます。

     

    一般論として、内縁の配偶者が、他方の配偶者の扶養を受けている場合において、その他方の配偶者が不法行為によって死亡したときは、内縁の配偶者は、将来の扶養利益の喪失を損害として、加害者に対して、その損害賠償請求をすることができます(最高裁平成5年4月6日判決)。

    頭書の裁判例でも、原告(内縁の妻)が死亡した内縁の夫と、約29年にわたり、ほぼ住居を同一にして生活し、主に内縁の夫の稼働収入によって生計を維持してきたこと等から、両者が内縁関係にあったことを認定し、内縁の妻の被告(加害者)に対する扶養請求権侵害による損害賠償請求を認めています。

    法律上の婚姻関係がある場合には、死亡した配偶者が将来得たであろう逸失利益が損害額となり(死亡した本人の生活費を控除することになりますが)、それを他の配偶者が相続するという構成をとるのに対し、内縁関係の場合には、扶養されていた内縁の配偶者自身の扶養利益が損害額となる点が異なりますね。

    一般的に、扶養利益の算定は、死亡した被害者の年間収入から、その死亡した被害者本人の生活費を控除した額に、家族構成を考慮しながら決定される内縁配偶者の扶養利益分を乗じ、それに想定される扶養関係の存続期間を乗じて算出するものとされています。

     

    また、内縁の配偶者には、扶養利益の喪失による損害のほかに、固有の慰謝料も認められます。

    当該事例でも、内縁の夫と妻との関係及び生活状況等、その他一切の事情を考慮して、内縁の妻の固有の慰謝料として500万円を認定しています。

     

    なお、当該事例では、死亡した内縁の夫にも過失があり、40%の過失相殺をするのが相当であることから、内縁の夫と身分上ないし生活関係上一体であると認められる内縁の妻の固有損害についても、40%の過失相殺が相当であると判示されています。

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    2015.12.22

    訴訟上の和解が無効と判断された事例

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    今回は、原審での訴訟上の和解が、控訴人の真意に出たものではないとして、控訴審において無効と判断された事例(東京高裁平成26年7月17日判決)をご紹介させていただきます。

    訴訟上の和解が無効と判断されることは非常に珍しいことです。原審の裁判官が直接、当事者の意向を確認して、和解が成立したものと判断しているわけですから、それが普通覆ることはありません。

     

    当該事例は、築50年以上の老朽化した木造アパートの1室を月3万2000円で借りていた賃借人に対し、大家さんが建物の明け渡しを求めた訴訟です。原審において、大家さんが、賃借人に対し、立退料として220万円を支払う等を内容とした訴訟上の和解が成立したとして、和解調書も作成されましたが、その後、賃借人は和解は無効であると主張して、控訴をしました。

     

    原審において、賃借人は一貫して立退料として340万円の支払を求めており、前任裁判官が賃借人に対し、4回の和解期日に渡り、和解の勧奨(説得)をしたが、合意には達せず、和解は一旦打ち切りとなり、その後、前任裁判官の異動により、後任の裁判官と交代し、後任裁判官の下で和解が成立したものとされました。

     

    上記控訴審判決は、このように一切譲歩の姿勢を見せない賃借人が、仮に和解期日において、340万円より減額した金額で明け渡すことを承諾したかのような言葉を発したとしても、賃借人の上記姿勢を考慮すれば、それが賃借人の真意に出たものか確認を慎重にすべきであった旨の一般論を述べた上で、和解期日における原審の後任裁判官と賃借人のやりとりは、そのほとんどが和解室での両名だけの会話であったこと、和解条項の内容は、それが賃借人の真意に基づいたものであることが明白であるといえるほど単純なものではないこと(和解条項は使用損害金や供託金の帰属を含め15項目に及びます)、賃借人が裁判所に振込先口座を連絡しないなど和解期日後に和解の成立を前提とする行動をとっていないこと、このほかに、和解条項が賃借人の真意に出たものであることを認めるに足りる証拠はないことを理由に、和解は無効であると判示しました。

     

    ところで、賃借人にとって、その主張どおり、訴訟上の和解が無効と判断されたまではよかったものの、その結果、控訴審において、立退料の金額について自判され、和解の220万円よりも大幅に低い、40万円(賃料の約1年分)と判断されてしまいました。

     

    もともと賃借人の主張する立退料の金額が過大だったのであり、裁判官の和解勧奨も、賃借人にとってよかれと考えてしていたことであって、それをむげに断り続けるのは、かえって損をしてしまう見本ですね。

     

     

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    2015.12.15

    星乃珈琲店の「スフレパンケーキ」

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    数年前から、星乃珈琲店のショーウインドーに飾られたサンプルを見て、興味をそそられながらも、カロリーのことを考え、我慢してきた「窯焼きスフレパンケーキ」。ついに先日、食する時がきました。

    スフレパンケーキ

    時期ごとのスペシャル「キャラメルりんごのスフレパンケーキ(ダブル)」です。二段になったパンケーキの上段に、温かく煮たりんごと、バニラアイスが添えられ、キャラメルソースがかけられています。

     

    しかし、この厚みのある圧倒的な存在感は、一体何でしょうね。1段2cmはあるであろう厚みの割りには、しっとりと滑らかな生地の舌触りに、至福の時を感じます。

     

    体重のコントロールを考えると、私はめったに食べることができませんが、自分へのご褒美として、癒されること間違いなしですので、皆さんも是非ご賞味下さい。

     

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    2015.12.14

    成人した子の父親に対する、大学卒業までの扶養料の請求が認められなかった事例

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    今回は、さいたま家庭裁判所越谷支部平成22年3月19日審判をご紹介させていただきます。

    これは、両親の離婚に伴い、母親(親権者)に引き取られた長女が、大学に進学し、成人に達した後に、別れて暮らす父親に対し、大学卒業まで、扶養料として月額11万5000円の支払を求める審判を申し立てましたが、認められなかった(申立を却下された)事案です。

     

    一般に、未成年者の子に対する親の扶養義務は、生活保持義務(自分の生活を保持するのと同程度の生活を保持させる義務)であるのに対し、子が成人した後は、親族間の扶養としての生活扶助義務(自分の生活を犠牲にしない限度で、被扶養者の最低限の生活扶助を行う義務)になると言われています。

    そして、通常、親が支出する子の大学教育のための費用は、生活保持義務の範囲を超えているものの、成年に達した子であっても、親の意向や経済的援助を前提に4年制大学に進学したようなケースで、学業を続けるために生活時間を優先的に勉学に当てることが必要な場合には、生活扶助義務として、親に対する扶養料の請求を認められることはありえます。

     

    しかしながら、上記事案において、長女は、母親に連れられて父親と別居してから、父親と全く没交渉であり、父親は長女が大学に進学したことも知らずに、ただ離婚判決で命じられたとおり、母親に対し、離婚時に1835万円余の財産分与をした上、長女が成人に達するまで月額11万5000円の養育費(その他に弟の分の養育費として月額11万5000円、計23万円)を支払続けていました。

    他方、母親は、父親から支払われた1835万円余の財産分与金を元手にマンションを購入し、自らのパート収入年間130万円と、父親から支払われる養育費で、大学に進学した長女及び私立高校生である弟の学費や生活費を賄いながら生活しています。

    父親は、年収が1500万円程度ありますが、不動産は所有しておらず、再婚して再婚相手との間に子が産まれているほか、まだ弟の養育費月額11万5000円の支払が残っており、今後、新しい家族と居住するための不動産を購入する可能性もあり、それほど余裕がある状態でもありません。

     

    そして、上記審判は、以上の通り、離婚判決後、長女と、父親とは完全に分かれて生活してきており、長女が父親の意向や経済的支援の約束のもとに大学に進学したということはないこと、母親は、1835万円余の財産分与金や養育費を受領してきており、申立人を大学に進学させるために必要な資力は有しているものと評価できること、母親がマンションを購入したことは、長女の責任ではないにしても、そのために生じる母親ら家族の生活費ないし長女の学費不足を、全く別家計の父親に転嫁することは相当でないこと、父親が、離婚判決で命じられたとおりに成人に達するまで養育費を支払い続けてきたことにより、父親の長女に対する生活保持義務としての扶養義務ははされていること、長女が大学における学業を継続することが経済的に困難になってきているとしても、その対応は、母親及び成人に達した長女においてなすべきであること等から、新しい家族とともに再出発を始めている父親に、生活扶助義務としての扶養料の支払を命じることは相当ではないとして申立を却下したのです。

     

    この事案とは異なり、子が、扶養を求められている親の意向やその経済的援助を前提に4年制大学に進学したようなケースでは、大学卒業まで相当額の扶養料の支払いが認められることはあるでしょう。

    また、上記事案では、前提として、父親が、母親に対し、既に多額の財産分与金を支払い、離婚判決どおり、長女が成人に達するまで養育費を払い続けていたことも評価されて、このような審判になったものと思料します。

     

     

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    2015.12.11

    賃貸人らのこのような追い出し行為は、違法です

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    建物の賃借人が家賃を滞納しているからといって、賃貸人(あるいは賃料の保証会社や管理会社)が、一方的に、解錠をして賃借人の居室内に立ち入り、賃借人の家財を撤去処分したり鍵穴に鍵ロックを取り付けたり、鍵自体を交換して、賃借人が立ち入られないようにしてしまうことがありますが、これらはすべて違法な行為であり、許されません。このような行為をしてしまうと、賃貸人らは、賃借人に対し、損害賠償責任を負うことになります(大阪地裁平成25年10月17日判決、東京地裁平成24年9月7日判決、大阪高裁平成23年6月10日判決等)。

     

    賃借人に対し、「必ず放り出します。」、「荷物捨てるぞ」、「どこの組のもんや」、「家賃を払わないことは、無銭飲食だ。」、「犯罪者」といった暴言を吐くこと(大阪地裁平成25年10月17日判決)や、「荷物は全て出しました」との張り紙をドアに貼る行為(姫路簡裁平成21年12月22日判決)も、違法行為とされています。近所に聞こえるよう大声で督促することや、早朝・深夜の督促行為も違法行為と評価される可能性が高いでしょう。

     

    このような追い出し行為を理由とする損害賠償請求に対し、賃貸人らから、自力救済行為として違法性を欠く旨の反論がなされることがありますが、自力救済行為は、原則として法の禁止するところであり、ただ、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合において、その必要の限度を越えない範囲内でのみ例外的に許されるにすぎないのであり(最高裁昭和40年12月7日判決)、以上のような追い出し行為が自力救済行為として違法性を欠くと判断されることはまずあり得ません。

     

    たとえ、賃貸借契約自体が有効に解除されていたとしても、結論はかわりません。

    また、賃貸借契約書に「賃貸人は、賃借人が賃料の支払を滞らせたときには、鍵を交換できる。」、「賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人は、賃借人の承諾を得ずに建物に立ち入り、適当な処置をとることができる」などとの特約(いわゆる自力救済条項)が定められていたとしても、このような条項は、公序良俗に反し無効であり、自力救済行為は許されません(札幌地裁平成11年12月24日判決、東京地裁平成18年5月30日判決)。

     

    このような違法な追い出し行為をした場合の損害賠償額ですが、家財を処分してしまった場合には、その家財の時価評価額が財産的損害として認められます。

     

    また、財産的損害とは別に、賃借人が居室を一方的に追い出され、不便な生活を強いられた期間や態様に応じて、数十万円程度の慰謝料が認められています。

    なお、家賃の保証会社が、5ヶ月間の間に、賃借人宅を7回訪問し、賃借人の携帯に65回架電し、連絡を求める旨の書面をドアに挟むなどしたのに、賃借人が電話に出ず、折り返しの電話連絡もせず、連絡を求める旨の書面も黙殺したという事案について、まれにみる悪質な賃借人であると非難されてもやむを得ない不誠実な対応であったといわなければならず、こうしたことは、慰謝料額の算定上考慮に入れるべき重要な事情というべきであるとして、慰謝料額を20万円にとどめた裁判例が存在します(東京地裁平成24年9月7日判決)。

     

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    2015.12.10

    恵比寿 どんくの「皿うどん」

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    かつて、恵比寿で飲食店を続けるのは難しいと聞いたことがあります。恵比寿にオフィスを構える会社は出入りが激しく、せっかく常連客になってもらっても、いなくなってしまうからだそうです。

     

    しかし、私が知る限り、比較的長くやっているお店もたくさんあります。今回私が訪れた「どんく」もその一つです。JR恵比寿駅から駒沢通りを渡った、この恵比寿西のエリアには飲食店(主に居酒屋)が立ち並んでおり、10年くらい前から、駅から数分歩いたところに、ちゃんぽん・皿うどんのお店があることは知っていたのですが、先日、無性に、ちゃんぽん・皿うどんが食べたくなって、ふと思い出し、初めて訪れました。

     

    ちゃんぽんにしようか、皿うどんにしようか、しばし悩んだ末、先月長崎に行ったときには、ちゃんぽん食べたからなぁと思い、今回は、皿うどん(やわらか太麺)を頼みました。

    どんくの皿うどん

    どーーーーーーーーーん!!

    写真では分かりずらいかも知れませんが、通常の1.5人前くらいありそうなボリュームで、テーブルに置かれたときは、一瞬とまどいましたが、食べ進めて行くうちに、皿うどんって、これこれとうなずきながら、ぺろりと平らげてしまいました。

     

    これまでは途中でお酢をかけていたのですが、長崎の人はソースをかけるという話を思い出し、卓上に常備されていたウスターソースを試してみたところ、甘みと酸味のコクが増し、これは断然ありですね。

     

    この「どんく」、夜は居酒屋として営業しており、中華料理の一品料理が充実しているのですが、飲まずに、麺類や定食だけの利用も可能なようですので、お一人様でも遠慮なく、お立ち寄り下さい(しかし、複数で行った方が、色々なメニューを味わえて楽しいと思います)。

     

     

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    2015.12.09

    賃借建物の原状回復義務の範囲

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    建物の賃借人は、退去時に建物を原状に回復して返還する義務を負いますが、通常の使用による損耗については、既に賃料の中に含まれており、その修理原状回復費用を負わないのが原則です。

     

    しかし、家主の側からすれば、畳や、床、壁紙など新品状態の方が新しい賃借人を得やすいことから、一方的に、通常の使用による損耗分を含めて修理原状回復にかかった費用を敷金から差し引くことがあり、これが紛争の火種になります。しかし、このような家主の主張が認められるには、その旨の特約がなければなりません。

     

    この点、最高裁平成17年12月16日判決は、「建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約(通常損耗補修特約)が明確に合意されていることが必要である」旨判示しています。

     

    そして、上記最高裁判決の事案では、契約書において負担区分表に基づき補修費用を負担することが定められており、その負担区分表には、襖紙・障子紙の汚損(手垢の汚れ、タバコの煤けなど生活することによる変色を含む)・汚れ、各種床・壁・天井等の仕上材の生活することによる変色・汚損・破損については、いずれも退去者(賃借人)の負担とされていましたが、これら文言自体からは、通常損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえないなどと判示して、通常損耗補修特約の成立を否定しました。

     

    また、下級審判決において、「小修理は賃借人の負担において行う。賃借人は、故意過失を問わず、本件建物に毀損、滅失、汚損その他の損害を与えた場合は、賃貸人に対し賠償義務を負う。」(名古屋地裁平成2年10月19日判決)とか、「賃借人は、本契約が終了した時は、賃借人の費用をもって本物件を当初契約時の原状に復旧させ、賃貸人に明け渡さなければならない。」(大阪高裁平成12年8月22日判決」といった契約条項は、通常の使用による損耗・汚損の損害を賃借人が賠償又は費用負担することを定めたものではない旨判示されています。

     

    では、どのような特約であれば、通常損耗も含めて賃借人が費用を負担する特約として有効かというと、「賃借人が本件建物を明け渡すときは、賃借人は畳表の取替、襖の張替え、クロスの張替、クリーニングの費用を負担する」という特約(しかも、この特約は、他の条項(黒の不動文字)と異なり、赤の不動文字で記載されていた)については、文理解釈上、自然損耗を含まない趣旨であると解することは困難であるなどとし、通常損耗を含めて賃借人が負担すべきとした下級審判決(東京地裁平成12年12月18日判決)が存在します。

     

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