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    2018.07.27

    【景表法】食品の優良誤認表示

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    今回は度々起きる、食品の優良誤認表示について、景品表示法上の問題点についてご説明させていただきます。

     

    和牛

     

     

    ■優良誤認表示とは?


     

     

    商品・サービスの品質、規格、その他の内容について、一般消費者に対し、実際のもの(あるいは、競争関係にある他の事業者のもの)よりも著しく優良であると誤認表示される表示を「優良誤認表示」といい、景品表示法で禁止されています(第5条1号)。

     

    これに対し、商品・サービスの価格、その他の取引条件についての不当表示は、「有利誤認表示」といい、これも景品表示法で禁止されています(同条2号)。

     

     

    ■「品質、規格、その他の内容」とは?


     

     

    「品質」とは、成分(原材料、純度、濃度、混用率、添加物の有無など)と、属性(性能、効用、安全性、衛生性、鮮度、栄養価、味、香りなど)のことです。

     

    「規格」とは、例えば、JAS規格、牛乳・乳製品の規格、公正マークなど、公的又は私的機関が定めた各種の規格、等級、基準などを意味します。

     

    「その他の内容」には、原産国(地)、製造方法、受賞の有無、有効期限などが含まれます。

     

     

    ■「一般消費者」とは?


     

     

    普通の消費者、平均的な消費者という意味です。専門的な知識を持つ人や、ほとんど無知な人を基準とするものではありません。

     

    なお、その商品等が老人向けのものである場合は平均的な老人が、子供向けのものである場合には平均的な子供が「一般消費者」としての基準になります。

     

     

    ■「著しく」とは?


     

     

    その表示の誇張の程度が、社会一般に許容される程度を超えて、一般消費者による商品・サービスの選択に影響を与える場合をいいます。

    その誤認がなければ顧客が誘引されることが 通常ないであろうと認められる程度に達する誇大表示であれば、これに当たります。

     

     

     

    ■食品に関する、実際の違反例


     

     

    ・実際は大部分について、松坂牛出ない和牛の肉を使用していたのにあたかも料理に松坂牛を使用しているかのような表示をしていた。

    ・「和牛等特色ある食品の表示に関するガイドラインについて」における和牛の定義に該当しない牛の頬肉を使用していたにもかかわらず、あたかも黒毛和牛の頬肉を使用しているいるかのような表示をしていた。

    ・ランチセットで、「京地鶏」「半熟卵」を使用しているかのような表示をしていたが、京地鶏の肉ではなく、ブロイラー肉を使用しており、半熟卵も使用していなかった。

    ・「車エビのチリソース煮」というメニューの販売が行われていたが、実際には車エビではなく、それよりも安価なブラックタイガーを使用していた。

    ・「島根県産地国内産サザエ貝」と表示していたにもかかわらず、実際には韓国産のサザエ貝を販売していた。

     

     

     

    ■違反に対する処分


     

     

    ・違反したことを一般消費者に周知徹底すること

    ・再発防止策を講ずること

    ・その違反行為を将来繰り返さないこと

    などを内容とした「措置命令」が行われます。

     

     

    また、「課徴金納付命令」が出される場合もあります。

     

    課徴金の額は、対象行為に係る商品・サービスの「売上額」に3%を乗じた金額が課徴金額となります。

    課徴金額が150万円未満の時は、課徴金の納付は命じられません。

    また、違反事実を自主的に消費者庁長官に報告した事業者は、所定の要件を満たす場合、課徴金の2分の1が減額されます。

    さらに、所定の手続きに従って、消費者に対して返金措置を行った場合には、課徴金額が減免されます。

     

     

     

     

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    2018.07.19

    【独禁法】配送料カルテルの法的問題点

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    お中元などの配送料金について、百貨店同士が合意をし、一律値上げをしたとして、公正取引委員会が、大手5社に対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)で、総額約1億9000万円の課徴金納付命令を出す方針を伝えた旨の報道がなされました。

     

    お中元

     

    ■価格カルテル


     

    これは、事業者が他の事業者と共同して、価格の引き上げ等について合意をし、一定の取引分野(市場)における実質的に競争を制限する「価格カルテル」と呼ばれるもので独禁法において、不正な取引制限として、禁止されています(2条6項)。 

     

    価格カルテルは、数量制限カルテル、入札談合とともに、ハードコア・カルテルと呼ばれ、競争法を有するどの国でも原則として違法とされています。

     

     

    ■「共同して」とは


     

    価格カルテルは、他の事業者と「共同して」行われる必要がありますので、他の事業者との「意思の連絡」(合意)が必要です。

     

    「意思の連絡」は、

    ・一方の対価引上げを他方が単に認識、認容するだけでは足りませんが、

    ・事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、

    ・相互に他の事業者の対価の引き上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りる

    と解されています(東芝ケミカル審決取消請求事件(差戻審))。

     

    この「意思の連絡」は、全員で顔を揃える会合で行われる必要はありません。また、違反事業者の従業員間で直接に行われる必要はなく、他人を介して間接的に行われるものでも足ります。

     

     

    ■「競争を実質的に制限する」とは?


     

     

    「価格カルテル」が成立する要件の1つ「競争を実質的に制限する」とは、競争自体が減少して、特定の事業者または事業者集団が、その意思で、ある程度自由に、価格等を左右することによって、市場を支配することができる形態が現れているか、または少なくとも現れようとする程度に至っている状態です。

     

    市場を支配する程度については、一定の取引分野における競争を完全に排除し、価格等を完全に支配することまでは必要ありません。

     

    一般的に、過半あるいはそれに準じる大きな市場シェアを有する事業者が競争を制限する内容の合意をすれば、「競争を実質的に制限する」と認定されます。

    他方、合意をした事業者のシェアがそれほど高くない場合であっても、違反行為に参加している事業者以外の競合他社の多くがその価格設定に追随していれば、その合意が行われたことによって、「競争を実質的に制限する」と認定されることになります。

     

    また、競争が実質的に制限されたというためには、合意の内容が実施に移されたことは要件ではありません。

     

    続いて、「価格カルテル」の違反措置について説明させていただきます。

     

     

    ■課徴金納付命令


     

    本件では、百貨店大手5社に対し、総額約1億9000万円の「課徴金納付命令」が出される見込みですが、これは独禁法等で定められた一定の算式(課徴金額=違反行為が行われた期間中の対象商品または役務の売上高または購入額×課徴金算定率)に従って計算された金額を国庫に納めるよう命じる行政処分です。

     

    課徴金算定率は、違反行為の内容、事業者の業種(製造業等か、卸売業か、小売業か)、事業者の規模(大企業か、中小企業か)によって異なります。

     

    課徴金算定率は、違反行為を繰り返した場合や、違反行為で主導的な役割を果たした場合には加算され、反対に、早期に違反行為をやめた場合には軽減されることが規定されています。

     

     

    ■課徴金減免制度


     

    本件では、大丸松坂屋(東京)も合意に加わっていましたが、事前に違反を自主申告したため、課徴金納付命令を免れる見通しです。

     

    これは、「課徴金減免制度」(リーニエンシー)によるものです。不当な取引制限に自ら関与した事業者が、その違反の内容を公取委に自主的に報告した場合には、課徴金が減免されます(7条の2)。

     

    公取委の調査開始日より前に、最初にこの報告をした事業者については、課徴金が100%減免されます(課徴金納付命令が出されません)。2番目に報告した事業者の減額率は50%で、5番目までの事業者が減額の対象になりますが、3番目以下の事業者の減額率はいずれも30%です。

     

    この制度は、違反行為の発見、解明を容易にし、競争を早期に回復することを目的としたものです。

     

     

    ■排除措置命令


     

    本件において、公取委は、「排除措置命令」も出す模様とのことです。これは、違反行為を速やかに排除するよう命じる行政処分で、例えば、価格引き上げの決定の破棄、破棄したことの取引先等への周知、再発防止のための対策等が命じられます。 

     

     

     

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    2018.07.17

    優しいコーチ 責めないで

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    今月12日の朝日新聞朝刊に、こんな見出しの記事が掲載されました。

     

    タイのタムルアン洞窟に、少年ら13人が閉じ込められた事件、唯一の大人であるコーチは教え子を危険に巻き込んでしまいましたが、タイでは、コーチを責める世論は強くないといいます。

     

    洞窟

    ※イメージ写真です。

     


     

     

    当初は、なぜ「雨期に洞窟に」との疑問の声も上がりましたが・・・はい、正直に白状します。私も、当初、この事件の一報に接した時、そういう感想を抱いた者の一人です。

     

    しかし、7月2日に洞窟の奥5kmで発見され、コーチのエーカポンさんがお菓子を分けたり、大声を出さないように指示して、少年らの体力を温存させていたことがわかると、これに呼応するかのように、エーカポンさんのフェイスブックには、「これからも最高の指導者でいて」などと3万件以上のコメントが寄せられました。

     

    エーカポンさんは幼くして両親を亡くし、孤児として寺で10年ほど暮らしました。成人後、夜市で小物を売ってしのぎながら、サッカーコーチの職を得た苦労人のようです。

     

    とかく責任追及ばかりが議論されがちな世の中ですが、自戒の意味も込めて、ご紹介させていただきました。

     


     

     

    ところで、少年らの命を繋いだ食料は、サッカー練習場近くの6畳ほどの小さいな駄菓子屋で購入されたものでした。

     

    洞窟に行く前、少年2人がやってきて30袋以上のスナック菓子とペットボトルを買っていったといいます。

     

    その駄菓子の70歳になる女店主カムさんは、少年らが洞窟に閉じ込められたニュースを耳にしてから、1日2回、無事に帰ってくるようにお祈りを捧げてきました。

     

    このようなたくさんの心優しい人たちの想いや、努力によって、少年らは無事救出されたのですね。

     

    ・・・そういえば、私も小学生の頃、よく駄菓子屋に入り浸って、餅太郎や、スナッキー、蒲焼さん太郎などを買っていたことを思い出しました。何だかとても懐かしい気持ちになりました。

     

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    2018.07.13

    【著作権】平成30年の著作権法改正について知っておくべき7つのこと

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    平成30年5月25日、著作権法の一部を改正する法律案が交付されました。 これは、主に、デジタル・ネットワーク技術の進展により、新たに生まれる様々な著作物の利用ニーズに的確に対応するため、著作権者の許諾なしに、著作物を利用できる範囲を拡大し、著作物の利用をより円滑に行えるようにすることを目的としたものです。

    著作権法 

     

     

    ■0 はじめに


      

    原則として、他人の著作物を利用(例えば、コピーしたり、インターネットで送信したりする行為)するには、著作権者の許諾が必要です。

    ただし、例外的に、法律で定める一定の場合には、著作権者の権利が制限され、許諾を得なくても、自由に利用することができます。今回の法改正により、以下の通り、その範囲が拡大されたのです。

     

     

    ■1 技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用


     

    公表された著作物は、著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合には、その必要と認められる限度において、利用することができるようになります(新著作権法第30条の4)。

    試験の用に供する場合に限らず、その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合も同様です。

     

     

    ■2 情報検索のための利用


     

    著作物の市場に悪影響を及ぼさないビッグデータを活用したサービスのため、著作物の利用について、著作権者の許諾なく行えるようになります(同法第47条の6)。

    例えば、書籍等の著作物の所在を検索するサービスについて、その結果とともに、書籍の表紙やその内容の一部を表示することが可能となります。

    イノべーションの創出を促進するため、情報通信技術の進展に伴い将来新たな著作物の利用方法が生まれた場合にも柔軟に対応できるよう、ある程度抽象的に定めた規定となっています。

     

     

    ■3 情報解析のための利用


     

    コンピューターによる情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の統計的な解析を行うこと)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案を行うことかができます(同法第47条の7)。

    例えば、大量の論文データを収集し、学生の論文と照合して盗用がないかチェックし、盗用箇所の原典の一部分を表示するなど、論文盗用の有無を検証するために利用することができるようになります。

     

     

    ■4 教育の情報化における利用


     

    ICTの活用により教育の質の向上を図るため、学校等の授業や予習・復習用に、教師が他人の著作物を用いて作成した教材を、ネットワークを通じて生徒の端末に送信する行為等について、著作権者の許諾なく行えるようになります(同法第35条)。

    現行法では、ここの著作権者の許諾とライセンス料の支払いが必要でしたが、これが不要となります。

    ただし、著作権者に対し、補償金の支払いは必要となります。

     

     

    ■5 障害者の情報アクセス機会の充実


     

    現行法では、視覚障害者や発達障害等で著作物を視覚的に認識できない者のみが対象になっている規定を見直し、肢体不自由等を含め、障害によって書籍を読むことが困難な者のためにも、録音図書の作成等を許諾なく行えるようにすります(同法第37条)。

    これは、マラケシュ条約(視覚障害者や判読に障害のある者の著作物の利用機会を促進するための条約)の締結に向けられたものです。

     

     

    ■6 美術品の展示作品の解説等における利用


     

    美術の著作物又は写真の著作物を原作品により公に展示する者は、当該著作物の解説又は紹介をすることを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、当該著作物を複製し、上映し、又は 自動公衆送信を行うこと等ができるようになります (同法第47条関係)。

    現行法では、小冊子(紙媒体)への掲載のみ、許諾不要でしたが、例えば、タブレット(デジタル媒体)での解説や紹介が可能になります。

     

     

    ■7 施行日


     

    平成31年1月1日からの施行です。

    ただし、「4 教育の情報化における利用」については、公布の日から3年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。

     

     

     

     

  • lawyer

    2018.07.04

    【著作権】なぜ、参考文献を明示しなければいけないのか?

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    最近、芥川賞の候補作に、主要な参考文献が明記されていなかった問題で、出版元の講談社がお詫びをした上で、甚大なダメージを受けた著者の尊厳を守り、作品の評価を広く読者と社会に問うためとして、ホームページ上で、候補作の全文を無料公開することを発表しました。

     

    ところで、なぜ、参考文献を明示しなければいけないのでしょうか。

     

     

    ■法的根拠


     

    それは、著作権法上、「公表された著作物」は、一定の要件の下、著作権者の許諾を得なくても、「引用して利用することができる。」のですが(第32条1項)、その場合、引用した「著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。」と定められているからです(第48条1項)。

     

     

    ■参考文献の明示方法


      

    書籍などの出版物の場合、引用した参考文献の出版社や、書籍・雑誌名、掲載版又は号、発行年(学術論文の場合は掲載ページも含む。)を明示しなければなりません。

     

    明示の場所は、利用した著作物に近接していることが原則ですが、著作物の性質や文章の流れ等を考慮して近接した箇所に明示することが不適切な場合には、注記を付して巻末や脚注に表示する方法も許容されます。

     

     

    ■そもそも引用とは?


      

    引用は、「公正な慣行に合致し」、「引用の目的上正当な範囲内で」行うことができます(第32条1項)。

     

    裁判例上、これら要件の充足性を評価するメルクマールとして、引用の方法として、例えば、引用文をカギカッコでくくって表示するなど、自己の文章との区別が図られているか(明瞭区分性)、自己の著作が主であり、引用される他人の著作物が従たる存在であるか(主従関係)が示されています。

     

    さて、冒頭の問題、参考文献とされた文献の販売元である新潮社は「参考文献として記載して解決する問題ではない」とコメントし、これに対し、講談社は、「著作権法に関わる盗用や剽窃などには一切あたりません」と反論しているようですが、今後、どうなっていくのでしょうか。

     

     

     

     

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