虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

最近、芥川賞の候補作に、主要な参考文献が明記されていなかった問題で、出版元の講談社がお詫びをした上で、甚大なダメージを受けた著者の尊厳を守り、作品の評価を広く読者と社会に問うためとして、ホームページ上で、候補作の全文を無料公開することを発表しました。

 

ところで、なぜ、参考文献を明示しなければいけないのでしょうか。

 

 

■法的根拠


 

それは、著作権法上、「公表された著作物」は、一定の要件の下、著作権者の許諾を得なくても、「引用して利用することができる。」のですが(第32条1項)、その場合、引用した「著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。」と定められているからです(第48条1項)。

 

 

■参考文献の明示方法


  

書籍などの出版物の場合、引用した参考文献の出版社や、書籍・雑誌名、掲載版又は号、発行年(学術論文の場合は掲載ページも含む。)を明示しなければなりません。

 

明示の場所は、利用した著作物に近接していることが原則ですが、著作物の性質や文章の流れ等を考慮して近接した箇所に明示することが不適切な場合には、注記を付して巻末や脚注に表示する方法も許容されます。

 

 

■そもそも引用とは?


  

引用は、「公正な慣行に合致し」、「引用の目的上正当な範囲内で」行うことができます(第32条1項)。

 

裁判例上、これら要件の充足性を評価するメルクマールとして、引用の方法として、例えば、引用文をカギカッコでくくって表示するなど、自己の文章との区別が図られているか(明瞭区分性)、自己の著作が主であり、引用される他人の著作物が従たる存在であるか(主従関係)が示されています。

 

さて、冒頭の問題、参考文献とされた文献の販売元である新潮社は「参考文献として記載して解決する問題ではない」とコメントし、これに対し、講談社は、「著作権法に関わる盗用や剽窃などには一切あたりません」と反論しているようですが、今後、どうなっていくのでしょうか。