仮想通貨の返還請求等をする場合の訴状案(請求の趣旨)
虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。
今回は、仮想通貨の返還請求や損害賠償請求をする場合、訴状の請求の趣旨にどのような記載をすればよいかについて説明させていただきます。
なお、仮想通貨に関する損害賠償請求などをする場合の法的問題点に関する若干の考察については、下記ブログをご参照下さい。
izawa-law.com/blog/lawyer/3243.html
また、仮想通貨の返還請求をする場合の訴状案(請求の趣旨)については、下記ブログをご参照下さい。
izawa-law.com/blog/lawyer/3241.html
●仮想通貨の返還を求める場合
マウントゴックス社の破産事件に関連し、利用者が破産管財人に対し、ビットコインの引渡し等を求めた訴訟(東京地裁平成27年8月5日判決)では、請求の趣旨に次のように記載されています。
被告は、原告に対し、ビットコイン●btcを引き渡せ。
しかし、実体のない仮想通貨を「引き渡せ」というのは、何だか違和感がありますね(上記訴訟は、破産法上の取戻権に基づくものであり、原告としては、所有権的構成をとるために、「引き渡せ」と表現せざるを得なかったのだと推察されますが。)。
実際に、上記訴訟では、ビットコインは有体物ではなく、ビットコインアドレスの秘密鍵の管理者が、アドレスにおいて残量のビットコインを排他的に支配しているとも認められないと判示され、所有権に基づく原告の請求が棄却されています。
仮想通貨については、寄託物の所有権を前提とする寄託契約の成立が否定されたわけです。
では、どのように記載すればよいでしょうか?
例えば、コインチェック社の利用規約には、「当社は、登録ユーザーの要求により、当社所定の方法に従い、ユーザー口座からの金銭の払戻し又は仮想通貨の送信に応じます。」(第8条3項)と規定されているわけですから、この利用規約を参照し、仮想通貨の返還を求める場合の請求の趣旨は、次のように記載するのが、素直であると思います。
被告は、原告に対し、仮想通貨ビットコイン●btcを、xxxxxxの送信先(アドレス)に送信手続をせよ。
また、複数の種類の仮想通貨を保有しており、それらすべての返還を求める場合には、訴状の末尾に目録をつけて、請求の趣旨に次のように、記載すればよいと思います。
被告は、原告に対し、別紙目録第1項記載の各仮想通貨について、同目録第2項記載の各送信先(アドレス)に送信手続をせよ。
●損害賠償請求する場合
この場合は、金銭請求をする場合の、基本的な記載で、何ら難しくはありません。
被告は、原告に対し、金●円及びこれに対する平成●年●月●日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
とか
被告は、原告に対し、金●円及びこれに対する訴状送達の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
などと記載して下さい。