源氏物語を知っていますか
虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。
阿刀田高さんの「●●を知っていますか」シリーズ、私は昔からのファンで、「ギリシア神話を知っていますか」をはじめ、全シリーズ読破しています。
先日、「源氏物語を知っていますか」を読み終わったところですが、実に面白く、続けて読み直しているところです。
源氏物語を読んで改めて驚いたことですが、恋い焦がれたり、嫉妬に狂ったり、つれなくされ思い悩んだり、すれ違ったり、世を儚んだり・・・と、1000年前のやんごとなき王朝人も、現代人と同じ感情をいただき、同じことを考えていたんですね。
ところで、源氏物語には、藤壺や、紫の上、玉鬘、浮舟といった有名なヒロインが数多く登場します。それに比べるとマイナーかもしれないけれど、私が好感を持った女性を二人ほど紹介させていただきます。
末摘花(すえつむはな)
源氏物語には、一人だけ、「末摘花」と呼ばれる、とても醜い女性が登場します。
「胴長で、顔色は青く、とりわけみっともないのは鼻・・・。普賢菩薩の乗っている象の鼻みたい。長く伸びて垂れ、先端が赤い。ひどく長い顔。」と紹介しています。
ただ頭の形は美しく、とりわけ髪は黒々として長く、床に広がり溢れています。
末摘花は、貴い出自の姫君なのですが、後見する者は絶え、生活に困窮し、蓬が生い茂り、庭は荒れ果て、土塀も崩れ、家屋は狐狸や野鳥のすみかと化しています。
ついに、身の回りの世話をしてきた信ずべき侍従も去る時がくるのですが、形見に贈る品も見当たらず、末摘花は、精一杯の餞別として、自分の髪の落ちたのをまとめて、カツラとしたのを由緒ある香と共に立派な箱に入れて渡すのです。別れの悲哀がしみじみと描かれています。
幸い、この後、末摘花は、源氏の君の庇護を受けることになります。
朝顔の姫君
ご承知の通り、源氏の君は、間然として非の打ち所がないプレイボーイです。
しかし、そんな源氏に口説かれても、心を許そうとしない姫君も中には登場します。それが朝顔の姫君です。
朝顔の姫君は、賀茂神社の斎院(神に奉仕する皇女)の任を解かれた後、叔母である女五の宮と共に暮らしはじめますが、老いさらばえた女五の宮は、「源氏が朝顔の姫君の婿になってくれれば、私も安泰・・・」と考えているようです。
また、朝顔の姫君の周辺にはべる女房たちもみんな、源氏を大絶賛し、「もったいないわ。なんで姫君はあんなにつれなくなさるのかしら」と不満いっぱいです。
しかし、朝顔の姫君は、そんな四面楚歌の状況下、どんなに源氏に言い寄られても、「ほかの女にあなたが示した浮気ごころを私自身あえて体験しようとは思いません。」と、決して源氏を寄せ付けません。
利益に負けたり、周りの意見に流されず、自分の気持ちに正直に、それを貫く心構えや実に立派!と、私は強く共感したのでした。