虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

契約書は、自社に有利な内容にするのが基本ですが、ライセンス契約など業務提携契約において、何でもかんでも自社に有利な内容にしようとすると、うっかり独占禁止法に違反してしまう場合があります。

 

特に、ベンチャー企業にとって、自社が保有する技術やノウハウを他の企業に提供したり、他の企業からその技術等の提供を受けたりするにあたり、ライセンス契約は重要な契約の一つであり、注意が必要です。

 

今回は、ライセンス契約における改良技術の取扱いについて、ご説明させていただきます。

 

 


 

 

●独占禁止法に違反するおそれがある規定

 

ランセンサー(知的財産権を保有し、権利の利用を許諾する側)であるX社としては、ライセンシー(権利の利用を許諾される側)であるY社が、ライセンス技術に基づき開発した改良技術についても、自社に帰属させたいと考えるかもしれません。

 

しかし、Y社が開発した改良技術について、Y社に次のような義務を課す定めは、原則として、「不公正な取引方法」(一般指定第12項)に該当し、独占禁止法に違反します。

 

 ・X社にその権利を無償で帰属させる義務(アサインバック)

 ・X社に独占的ライセンスをする義務(グラントバック)

 

このような行為は、技術市場におけるライセンサーの地位を強化し、他方、ライセンシーに改良技術を利用させないことによりライセンシーの研究開発意欲を損なうものであり、通常、このような制限を課す合理的な理由があるとは認められないからです。

 


 

 

●独占禁止法に違反しない規定

 

他方、ライセンシーY社が開発した改良技術が、ライセンス技術なしには利用できないものである場合に、Y社に次のような義務を課す定めは、原則として、独占禁止法に違反しないとされています。

 

 ・改良技術をライセンサーX社に対し、通知・開示する義務

 ・改良技術に関わる権利を相応の対価でX社に対し譲渡する義務

 ・改良技術をX社に非独占的にライセンスする義務

 

通常、Y社としては、自ら開発した改良技術を自社でも利用したいと考えるでしょうから、改良技術をX社に非独占的にライセンスする義務を、Y社に課すというのが一般的でしょう。

 

この場合、X社に「無償」で非独占的ライセンスをすることにしても、独占禁止法に違反しないと考えられますが、そのような提案をしても、Y社としては、難色を示すでしょう。

 

そこで、X社がY社に、相応のロイヤリティ(対価)を支払うことにすることが穏当です。

もっとも、改良技術がどの程度有用なものかは予めわからず、その額をあらかじめ定めることは困難なことから、ロイヤリティの額や支払い方法については、改良技術をライセンスする段階で、別途協議することになります。