霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

 

今回は、原告が自動車を運転中に発生した交通事故により負傷し、自動車も破損したため、保険会社(被告)に対し、人身傷害保険金及び車両保険金の支払いを求めたところ、原告は、事故後に救急搬送先の病院で飲酒検知を受け、呼気1リットル中0.1ミリグラムのアルコールが検出されていたことから、保険会社が酒気帯び免責を主張して、その主張が認められ、請求が棄却された事例(大阪地裁平成27年10月23日判決)を紹介させていただきます。

 


 

 

●酒気帯びとは?

 

保険の免責特約には、被保険者が道路交通法65条1項に定める酒気帯び運転またはこれに相当する状態で自動車を運転している場合に生じた損害に対しては、保険金を支払わない旨定められています。

 

この酒気帯びの概念について、当該判決は、具体的には、通常の状態で身体に保有する程度以上にアルコールを保有していることが、顔色、呼気等により、外観上認知することができるような状態にあることをいうと解しました。

 


 

 

●原告の反論

 

この点、原告は、保険約款では、違法薬物に関する免責事由として、麻薬等の影響により正常な運転ができないおそれがある状態で自動車を運転している場合を挙げていることとの均衡を考慮し、酒気帯び運転免責についても、酒気帯びの影響により正常な運転ができないおそれのある状態での運転の場合に限定して適用されるものであると主張しました。

 


 

 

●裁判所の判断

 

しかし、上記判決は、酒気帯び免責特約は、違法薬物に関する免責事由と異なり、明文上、酒気帯び状態であることに加え、その影響により正常な運転ができないおそれがあることまでを要件としていないこと、

 

道路交通法は、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態にはあたらない程度のものも含め、酒気を帯びて自動車を運転する行為を禁止しているのに対し、麻薬等を服用して自動車を運転すること自体を禁止するのではなく、「薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態」での自動車の運転を禁止しており、これに対応する保険免責特約も、それぞれの免責事由ごとにふさわしい要件を定めていると解されるのであって、他の免責事由の規定の仕方から酒気帯び免責特約を限定的に解釈することはできない旨判示しました。