銀座のクラブママは労働者?…ではないようです。
霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。
最近、仕事が忙しくて、ブログの更新ができていないにもかかわらず、HPへのアクセス数が増えていて、少し嬉しい気持ちになりました。
●裁判例の紹介
さて、今回は、銀座のクラブママが、クラブ経営者から契約(以下、「本件契約」といいます。)を解除されたことから、本件契約は労働契約であり、解雇は無効であると主張して、未払い賃金等の請求をした裁判例(東京地裁平成27年11月5日判決)をご紹介させていただきます。
裁判では、本件契約が労働契約か、それとも業務委託契約(準委任契約)かが争点となりました。
●労働者とは?
労働基準法には、労働者は「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義されています(第9条)。
また、労働契約法には、「労働者とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」と定義されています(第2条1項)。
しかし、この定義だけから、労働者の範囲を明確にするのは、難しいですね。
●裁判の判断のポイント
当該判決では、概略、次のように、判示されています。
①原告(クラブママ)は、あらかじめ顧客にクラブへの来店を勧誘し、来店の約束を取り付けた上で、クラブに来店した顧客を接待していたものであり、原告の顧客が来店する予定のない日には、基本的には、クラブに出勤する必要がないものとされていた。
その上で、被告(クラブ経営者)は、顧客のうちの誰にいつクラブへの来店を勧誘するのか、どのような方法で勧誘するのかといった点について、原告に指示や指導をしておらず、これらの点を専ら原告に任せていたものと解される。
②原告は、顧客に勧誘する来店日時を調整することにより、出勤日及び出勤時刻をほぼ自由に決めることができる立場にあった。原告が被告によって業務遂行の時間を指定・管理されていたということはできない。
③原告の報酬が原告の顧客に対する売上のみに基づいて計算され、原告の稼働時間と連動していなかった。
原告の報酬は、原告がクラブにおいて接客を中心とした業務を行ったことそれ自体の対価というよりも、原告が原告の顧客を勧誘してクラブに来店させることによって、被告の売上げに貢献したことの対価という性格が強いものということができる。
原告の報酬は、接客という労務提供の対価としたならば極めて高額であるということができる。
④当該クラブに在籍する他のホステスの報酬は、出勤日数に応じた日給制等であったのに対し、原告は、報酬や料金システムについて、他のホステスとは違う待遇を受けていた。
⑤被告は、社会保険の関係で原告を労働者として扱っていなかった。
上記事情に照らせば、本件契約について、原告が被告の指揮下において労働をし、その対価とし賃金の支払いを受ける旨の労働契約であったと評価することは困難であり、原告は労働者に該当しないというべきである。
●評価
他方、クラブのホステスについて、労働者性を肯定した裁判例として東京地裁平成22年3月9日判決があります。
使用者の指揮監督の有無や強弱、報酬の労務対償性の有無等を総合評価して判断するということでしょうね。