転貸を目的とする建物賃貸借契約について、期間満了を理由とする明渡請求を認めた事例
霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。
このところ、弁護士業務が多忙で久しぶりのブログ更新になってしまいました。忙しいときにも、コンスタントに情報提供をしていかなければと反省しております。申し訳ございませんでした。
さて、今回は、第三者への転貸を目的とする建物の賃貸借契約の期間満了を理由とする明渡請求につき、1年強程度の賃料差額の立退料の支払いをもって、明け渡しを認めた裁判例(東京地裁平成27年8月5日判決)をご紹介させていただきます。
借地借家法第28条には、建物の賃貸人による解約の申し入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、立退料の申出等を総合考慮して、正当事由があると認められる場合でなければ、することができない旨定められています。
上記裁判例は、第三者への転貸を目的とする建物の賃貸借契約について、賃借人が当該建物を使用する必要性は転貸による経済的利益に尽きること、契約終了時に賃貸人が転借人の賃借権(転貸人の地位)を引き受ける旨の条項があるため転借人の事情を考慮する必要は無いこと、賃貸人側の事情(当該建物を占有負担のない形で売却するために賃貸借契約を終了させる必要性)は、本来的な意味での自己使用の必要性をいうものではないが、他方、賃借人側にとっても当該建物を使用する強い必要性があるわけではないこと等を理由に、50万円(賃料差額の約15ヶ月分)の立退料をもって、更新拒絶につき正当事由の充足を認めています。
この裁判例では、賃借人の経済的利益が月額3万3000円(転貸収入月13万3000円−保証賃料月10万円)と少額で、賃貸借契約の終了によって賃借人の経営に影響を及ぼすような重大な不利益が生ずるとは認められない旨も判示されていますが、月額わずか数万円と絶対的評価としての経済的利益が低いか否かという問題ではなく、賃借人が行っている全事業のうち、その建物の転貸借事業による収益がどの程度の割合を占め、賃貸借契約の終了により、賃借人の経営に重大な不利益を及ぼすか否かの問題なのではないかと思料します。