虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

近時、インターネットビジネスを考えていらっしゃる方が多く、そのビジネス構築にあたって、著作権関係のご相談を受けることが多々あります。

 

今回は、カタログ(図録)に掲載されている素材をビジネスに利用する場合の著作権問題について考えていきたいと思います。

 


 

 

●カタログの著作物性

 

カタログも、使用されている素材の選択や配列によって創作性を有するものは、編集著作物として、著作権法上保護されます(著作権法第12条1項)。

 

東京高裁平成7年1月31日判決も、会社案内のパンフレット(ラフ案)につき、素材の選択及び配列に創意と工夫が存することを理由に、編集著作物性を認めています。

 

したがって、カタログのページ丸々をインターネット上のサイトに掲載したり、カタログにおける素材の選択や配列を真似することは、複製権や公衆送信権の侵害になりますので、そのカタログの著作権者から許諾を得る必要があります。

 


 

 

●素材である写真の著作物性

 

それでは、カタログのページ丸々を転載するのではなく、そのカタログに掲載されている写真を個別に画像化しサイトに転載する場合は、どうでしょうか。

 

カタログに著作物性が認められるのは、あくまでその素材の選択及び配列に創作性が認められるからであって、これらを真似することなく、その中の特定の素材を利用する行為は、カタログの著作権侵害にはあたりません。

 

この場合は、素材である個々の写真の著作物性が問題になりますが、被写体が平面的な物か立体的な物かで分けて考える必要があります。

 

 

(被写体が平面的な場合)

 

平面的な被写体を撮影して平面の写真にした場合には、その写真に著作物性を認めないのが通説的な見解です。例えば、絵画や掛け軸、版画、陰影等の平面的な美術品の写真には、著作物性が認められません。

 

この点、東京地裁平成10年11月30日判決も、版画を撮影した写真の著作権性につき、撮影対象が平面的な作品である場合には、正面から撮影する以外に撮影位置を選択する余地がないことなどを理由に、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法第2条1項1号)ということはできないとして、このような写真の著作物性を否定しています。

 

 

(被写体が立体的な場合)

 

立体的な被写体の写真には、基本的に著作物性が認められますので、このような写真を転載する場合には、その写真の著作権者から許諾を得る必要があります。

 

この点、知財高裁平成18年3月29日判決は、シックハウス症の対策商品の商品画像を、別業者が自社のサイト上に著作権者に無断で掲載をしたという事案につき、当該各写真について、被写体の組み合わせ・配置、構図・カメラアングル、光線・陰影、背景等にそれなりの独自性が表れているのであるから、創作性の存在を肯定することができ、著作物性はあるものというべきであると判示しています。

 


 

 

●被写体である美術品の著作物性

 

例えば、写真の被写体が美術品である場合、美術品そのものも著作物に該当します(同法第10条1項4号)。

 

編集著作物の素材自体に著作物(美術品等)が用いられている場合、当該著作物の権利は、編集著作物によって影響を受けませんので(第12条2項)、カタログに掲載されている美術品の写真をサイトに転載する場合には、カタログの著作権者からの利用許諾とは別に、美術品の著作権者からも、基本的に、利用許諾を得る必要があります。

 

なお、写真の著作物性と異なり、美術品の場合は、その作品が平面的か立体的かに関わらず、美術品の著作物性が認められますので、ご注意ください。

 

もっとも、当該美術品の著作者の死後50年以上経過している美術品については、著作権の保護期間を経過していますので(同法51条、52条)、当該美術品の著作権者から利用許諾を得る必要はありません。