霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

 

今回は、原告らが、被告が共有する区分所有建物の共用部分である庇等の屋外にカメラ4台を設置していることが、原告らのプライバシーを侵害しているとして、被告に対し、カメラの撤去と損害賠償を請求したのに対し、その請求を一部認めた裁判例(東京地裁平成27年11月5日判決)をご紹介させていただきます。

 

当該裁判例はまず、最高裁昭和44年12月24日大法廷判決等を引用し、「人はみだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」とした上で、「もっとも、ある者の容ぼう等をその承諾無く撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、撮影の場所、撮影の範囲、撮影の態様、撮影の目的、撮影の必要性、撮影された映像の管理方法等諸般の事情を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を越えるものといえるかどうかを判断して決すべきである」と判示しました。

 

そして、撤去を求められているすべてのカメラの設置につき、被告宅の防犯目的が含まれているが、原告らに対する監視目的が含まれているとまでは認められないとしつつ、うち1台のカメラ(カメラ1)について、原告宅玄関入口付近に立っている人が、顔を識別できるほどではないものの、かなり鮮明に映ること、通用口の前付近において上記ほど鮮明ではないものの、少なくとも人が通過していることは映像上認識することが可能であること等を認定し、撮影が常に行われており、原告らの外出や帰宅等という日常生活が常に把握されていること、当該カメラの設置は被告宅の窓付近を撮影して防犯を図るものであるとするが、窓の防犯対策としては二重鍵を設置するなどのその他の代替手段がないわけではないこと等から、これによる撮影に伴う原告らのプライバシーの侵害は社会生活上受忍すべき限度を越えているとして、その撤去を認めました。

 

他方、残り3台のカメラについては、原告ら所有居室の玄関付近や廊下等、公道に出るための通行路が撮影範囲となっていないことから、原告らのプライバシーが社会生活上受忍すべき限度を超えて侵害されていることできないとして、請求を棄却しました。

 

また、カメラ1によるプライバシー侵害に伴う慰謝料額は原告1人あたり10万円(原告4人で計40万円)が認定されています。

その理由として、カメラ1の撮影範囲が原告らのプライバシーを保護すべき場所に及んでいるものの、これらの場所は屋外であって全くの私的空間ではないこと、監視目的で設置された場合に比べると悪質性は低いこと、カメラ1で撮影された映像が約2週間経過後には自動的に上書きされて消去され、映像が永続的に保存・管理されるものではないことが挙げられています。