マンション管理組合によるバルコニーの修補義務を否定した事例
霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。
本日は、マンション管理組合による、バルコニーの修補義務を否定した裁判例(東京地裁平成27年7月17日判決)をご紹介させていただきます。
Xは、マンション10階部分の専有部分(本件居室)を購入しましたが、本件居室に接するバルコニー(共用部分)があり、Xが専用使用権を有していました。
ところが、そのバルコニーには透明の手すり用ガラスが設置されており、そのガラスには購入当時から複数箇所にシミのように見える部分(本件不具合)があり、清掃等によって除去できない状態でした。
そして、マンションの管理規約には、共用部分の管理は、原則としてY管理組合がその責任と負担において行い、バルコニー等の管理のうち通常の使用に伴うものは専用使用権を有する者がその責任と負担において行う旨定められていたことから、Xは、Y管理組合が共用部分にあるバルコニーの本件不具合を修補する義務を負っていたにもかかわらず、その義務を怠ったと主張して、Y管理組合に対し損害賠償請求の訴訟を提起しました。
これについて裁判所は、Y管理組合が共用部分を適正に管理する義務を負っているものと解されるとしても、共用部分に存在する不具合の全てについて、その程度等にかかわらず、修補をする義務があるということはできず、不具合の程度や修補のために生ずる費用負担の程度に照らし、合理的と認められる範囲で修補等の対応をすれば足りるとしました。
その上で、本件不具合は、それによって本件居室からの眺望に若干の影響が生じることは否定できないものの、その程度は限定的なものと認められ、その他本件居室及び本件バルコニーの通常の使用に支障を生じさせるものとは認められない一方、本件不具合を修補するには、バルコニーガラスの交換を要し、少なくとも85万円の費用を要するから、Y管理組合に本件不具合の修補をする義務を負わせることは、本件不具合によって受けるXの不利益の程度に比して、Y管理組合に過分の経済的負担を強いることになるから、Y管理組合にそのような義務があるということはできない旨判示し、Xの請求を棄却しました。