霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

 

裁判官も人間ですから、原告と被告どちらの主張が真実か判らない場合もあります。しかし、そのような場合にも、裁判をしないというわけにはいかず、最終的には、何かしらの判決を下さなければなりません。そのために、予め法律の定めによって抽象的に、どちらか一方の当事者が、事実の立証が十分にできなかった場合に、敗訴するリスクを負わされています。これを証明責任(立証責任)といいます。

 

 ざっくりというと(例外もあります)、証明責任は、請求をする者(権利を主張する側)が責任を負います。

 

例えば、事故によって損害を被ったという場合には、損害賠償請求をする被害者の方で、事故が発生したことや、損害を被ったこと(損害額)、事故と損害との間に因果関係があることを立証しなければなりません。時々、被害者の方で、「なんで被害者なのに、色々と立証資料を準備しなければいけないんだ!」と言われる方がいらっしゃいますが、上記のとおり、損害の立証責任は被害者が負っており、これをに果たさないと、請求が十分に認められないおそれがあります。

 

また、貸した金の返済を求める場合には、金を貸した人が、相手に対し、金を貸したことを立証しなければなりません。この場合、相手が金を受け取ったことは認めていても、「それは借りたものではなく、もらったものだ」と反論したら、金を貸した人の方で「お金はあげたものではなく、貸したものである」ということを立証しなければなりません。

 

他方、いったん発生した権利関係が消滅したことについては、権利を否認する者が証明責任を負います。

 

例えば、金は借りたが返済をしたという場合には、金を借りた人の方で返済した事実を立証しなければなりません。金を貸した人の方で、返済を受けてないということを立証する必要はありません。

 

事実が存在しないという証明は、悪魔の証明といわれ、およそ立証することは不可能です。そんな不可能なことを法が強いることはありません。

 

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