弁護士ブログ

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    2016.05.13

    二段の推定

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    訴訟において、相手方が、契約書や合意書・覚書など文書の成立の真正を認めるときは、それ以上、その文書が真正に成立したことを立証する必要はありません。しかし、相手方から文書の成立の真正が争われた場合には、挙証者が、その文書が真正に成立したことを立証する必要があります。

     

    もっとも、文書の作成名義人の印影が、当該名義人の印章によって顕出されたものであるときは、反証のない限り、その印影は本人の意思に基づいて顕出されたものと、事実上推定されます(一段目の推定)。

    さらに、この一段目の推定によって、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と定める民事訴訟法第228条4項の要件を充足し、文書全体の成立の真正が法律上推定されます(二段目の推定)。

    これを民事訴訟法の分野で、「二段の推定」といいます。

     

    ですので、文書が真正に成立したことを争う相手方としては、この二段の推定がされることを妨げ、文書が真正に作成されたのか否かわからない状態にしなければなりません。相手方の反証としては、次のものが考えられます。

    ①文書に押印された印影が、文書の名義人の印章によって顕出されたものではないとして、一段目の推定の前提事実自体を争う。

    ②文書の名義人の印章が第三者に盗用された、あるいは、文書の名義人が第三者に印章を預けていたところ、無断で冒用されたなどと、一段目の推定が覆る事情を立証する。

    ③押印した後に、本文が挿入・削除(文書の変造)されたとして、二段目の推定が覆る立証をする。

     

    ところで、挙証者は、必ず民事訴訟法第228条4項による推定によらなければならないということはありません。他の間接事実や、文書作成に立ち合った第三者の証人尋問等によって、文書が名義人の意思に基づいて作成されたことを直接立証してもよいのです。

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    2016.05.09

    元請人の下請人に対する建築瑕疵を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求の可否

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    今回は、元請人が下請人に対し、建築瑕疵を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求をした、東京地裁平成27年6月26日判決をご紹介させていただきます。事案の概要は次の通りです。

     

    原告(元請け)は、平成10年に、ディベロッパーであるA社から、千葉県浦安市内における戸建住宅の設計・施工を請け負い、さらに被告(下請け)に対し、その基礎工事を発注しました。平成11年に完成した当該建物は、A社から、Bに対し売却されました。ところが、平成23年に発生した東日本大震災により、周囲の地盤が液状化し、当該建物に不同沈下が生じました。当該建物の所有者Bは、沈下修正工事を計画しましたが、事前調査を行った業者から、基礎の底盤の厚さが薄いため、沈下修正工事ができないと告げられたため、施工業者である原告に対し、損害賠償を求め、両者が協議した結果、原告がBに対し、解決金1000万円を支払うという和解が成立しました。その後、原告が基礎工事をした被告に対し、不法行為に基づき、解決金相当額の損害賠償を求める訴えを提起したというのが本件事案です。

     

    原告と被告とは、直接、請負契約を締結した当事者であるわけですから、本来、契約に基づく債務不履行や瑕疵担保責任を追及すべきです。なぜそうしなかったかと言えば、契約の締結・引渡が十数年以上前なので、時効や除斥期間に掛かっていると考えられるため、不法行為に基づく損害賠償請求という構成をとらざるを得なかったものと推測されます。

     

    この地裁判決の前提として、建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命・身体又は財産が侵害された場合には、設計・施工者等は、基本的に、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う旨判示した最高裁平成19年7月6日判決、及び「建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず、当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する」旨判示した最高裁平成23年7月21日判決が参考になります。

     

    冒頭の地裁判決は、これら最高裁判例を前提として、「元請人は施主又は居住者等から不法行為に基づく損害賠償責任を追及される可能性があるところ、自らが関与しない下請人の所為によって経済的な負担を強いられないという利益は不法行為上も法的保護の対象となるものと解される。」、「最高裁平成19年判決が建物の建築に係る元請人と下請け人との間の不法行為責任について直接判事したものでないとしても、その理は、下請人の元請人に対する不法行為責任の有無を判断するに際しても同様に妥当すべきである。」などと判示して、一般論として、元請人の下請人に対する、建築瑕疵を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求を認めました

     

    しかし、あてはめ段階において、専門家調停委員の意見も踏まえ、当該基礎の耐力を全体としてみる限り、不同沈下補正が不可能とはいえないことはもとより、将来的にみて建物の基本的な安全性を損なう蓋然性があるとまでは認められないとして、結論として、原告の請求を棄却しています。

     

     

     

     

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    2016.05.02

    事務所近くのおすすめランチ⑤ 新橋チャーハン王「チャーハン」

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    どうして、パラパラのチャーハンって、時々、無性に食べたくなるのでしょうね。

     

    「新橋チャーハン王」。普段、炭水化物は極力控えるようにしているので、霞が関ビル地下に開店したときから、ずっと気にはなっていながら我慢していたのですが、先日、誘惑に負けて、ついに入店しまいました。

     

    新橋チャーハン王

    炭水化物を、油でコーティングするという、シェイプアップを目指している人間にとっては、ものすごく罪悪感を感じさせる食べ物ですが、その分、なんて破壊力のある美味しさなんでしょうね。

     

    具材は卵、ハム、なるとからなる、ザ・チャーハンともいうべき、王道のチャーハンで、価格は980円とやや割高ではありますが、あっさりとした鶏スープが付いてくるのは嬉しい限りです。

     

    夜は、ハラミなどを出す肉バルとして営業しているようですが、ランチは、ほぼチャーハン1品だけでの営業です。

     

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    2016.04.28

    従業員が業務終了後に起こした交通事故につき、会社の使用者責任を否定した事例

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    今回は、従業員が、勤務終了後、自家用車を運転中に起こした交通事故について、会社の使用者責任に基づく損害賠償義務を否定した裁判例(東京地裁平成27年4月14日判決)をご紹介させていただきます。

     

    民法の基本の勉強になりますが、民法第715条の使用者責任の要件の一つである「事業の執行」には、判例上、被用者の職務執行行為そのものには属しないが、その行為の外形から観察して、あたかも被用者の職務の範囲内の行為に属するものとみられる場合も含まれるとされています(外形理論)。

     

    これは、取引的不法行為のみならず、交通事故のような事実行為的不法行為にも適用されています。

    但し、事実的不法行為に対して外形理論を適用することについては否定的な見解や、被用者の自家用車による通勤途上の事故については、使用者責任も運行供用者責任も原則として否定されるべきであるとする見解もあります。

     

    頭書の東京地裁の裁判例は、工事現場において交通誘導の業務を行っていた従業員が、勤務が終了した後に、制服を着用したまま退勤し、自家用車を運転中に交通事故を起こしたという事案ですが、

    被告(会社)は、警備員に交通誘導業務を行わせるにあたり、指定工事現場への直行直帰を認めており、業務の前後で被告の本社において被告の業務を行うことは予定されていなかったこと、

    交通誘導業務に当たって自家用車を利用する必要があるなどの事情は窺われず、公共交通機関を利用して指定工事現場に行くことも可能であったこと、被告が警備員に対し、自家用車による通勤を命じたり、これを助長するような行為をしていたことは窺われないこと

    に照らすと、警備員が交通事故当時、被告の制服を着用していたことを考慮しても、同時点の警備員の運転行為が被告の業務と密接に結びついているということはできないとして、会社の使用者責任に基づく損害賠償義務を否定しました。

     

     

     

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    2016.04.07

    遺言書の文面全体に斜線を引く行為が、遺言の撤回にあたるとみなした判例

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    今回は、遺言者が、自筆証書である遺言書に、その文面全体の左上から右下にかけて赤色ボールペンで一本の斜線を引いた行為が、これが民法1024条前段の「遺言者が故意に遺言書を破棄したとき」に該当し、当該遺言を撤回したとみなした判例(最高裁平成27年11月20日判決)を紹介させていただきます。

     

    そんなこと、一般的な感覚からして当然じゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

    なぜ、このようなことが問題になるかというと、自筆証書の遺言の加除・変更をする場合については、民法968条2項に厳格な方式(自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。)が定められているため、元の文字が判別できる程度の抹消であれば、それは「遺言書の破棄」ではなく、「変更」にすぎず、民法968条2項の方式に従っていない限り、「変更」としての効力は認められず、元の文字が効力を有すると解する考えもあるからです。

    本件の原審も、同様に考え、斜線が引かれた後も元の文字が判読できる状態である以上、元の遺言書は有効であると判断しました。

     

    これに対し、最高裁は、「遺言書の文面全体に斜線を引く行為は、その行為の有する一般的な意味に照らして、その遺言書の全体を不要のものとし、そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であるから、その行為の効力について、一部の抹消の場合と同様に判断することはできない。」と判示しました。

     

    あくまで、「遺言書を破棄」したとみなされるのは、遺言書の文面全体に斜線が引かれている場合であって、その一部に斜線が引かれているにすぎず、それが民法968条2項の方式を具備していない場合には、抹消の効力が否定される可能性が高いでしょう。

     

    ところで、本件事案で、遺言書に斜線を引いたのは、本当に遺言者自身なのかと疑問に思いましたが、本件事案では、遺言者の経営する医院内の麻薬保管金庫から遺言書及びそれが入った封筒が発見され、これを金庫内に入れた人物は遺言者以外に考えられないという事情があったようです。

     

     

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    2016.04.07

    入学式 祝辞

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    先日、とある専門学校に来賓として招かれ、祝辞を述べることになりました。

    お恥ずかしながら、その内容をご紹介させていただきます。

     

     

    新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

     

    本来、祝辞というのは、皆さんを祝福する、明るい話をするものですが、今日は少し厳しい話をさせていただきます。

     

    皆さんは、当たり前のように高校を卒業して、専門学校に進学し、それが当たり前のことのように思われているかもしれませんが、今の世の中、それは当たり前のことではありません。

     

    弁護士という仕事は、ものすごいお金持ちから、ものすごくお金に困っている人まで相手にしますが、 今の日本はどんどん格差社会が進行し、貧富の差が大きくなっていると感じます。お金がなくて、食べものが買えず、制服が買えなくて、中学校にも通えないという家庭もあります。

     

    私も、実際に、毎日ネットカフェで寝泊まりをしたり、お金がなくて3日間ゴハンを食べていないという20代の男性に会ったことがあります。 また、経済的余裕がなく、中学を出たら高校には行かずに働くんだと言っていた娘さんもいました。

     

    たとえぜいたくはできなくても、食べものに困ることなく、専門教育を受けられるということは、とても恵まれた、幸せなことなんです。

     

    これまで愛情豊かに皆さんをはぐくみ、進学の機会まで与えてくれた、保護者の方々に対する、感謝の気持ちを忘れないで下さい。

     

    では、その貴重な機会を、どう活かせばよいでしょうか。

     

    これから過ごす1〜2年間は、自分の将来のための、投資の時間です。 この間、努力をして、結果を出せば、その分将来のリターンは確実に大きくなります。

     

    なりたい自分になるには、とてもたくさんのエネルギーを必要としますし、つらい思いをするかもしれません。でも、後できっと、頑張って良かったと思えるときがやってきます。

     

    今、皆さんは、ものすごく将来の可能性がある状態です。 しかし、その可能性は時間が経てば経つほど、どんどん狭くなっていきます。

    私みたいな、おっさんになると、今から、なりたい自分になりたいと思っても、それは簡単なことではありません。

     

    今から、1〜2年後に、皆さんは、自らが目指す専門の仕事についています。その仕事に必要な知識とスキルを身につけて下さい。 ここでの学校生活は、これからまだ50年以上もある、皆さんの今後の人生に重大な影響を及ぼします。 くれぐれも悔いの残らないように過ごして下さい。

     

    最後に、皆さんが充実した学校生活を送られることを祈念いたしまして、私からのお祝いの言葉にかえさせていただきます。

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    2016.04.04

    桜満開 〜目黒川

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    春らしい暖かさが続き、ついに桜が満開になりましたね。

    私は、この数年、目黒川の桜を観に行っています。

     

    ここのお花見の特徴は、数㎞に渡って桜が咲き誇る、川沿いの道を散策しながら、楽しめるところです。

    座っての宴会はできませんが、その分騒がしい酔客もおらず、清楚なソメイヨシノをめでながら、川沿いのショップ巡りをすることができます。

     

    もちろん、中目黒周辺のお店(但し、週末は混雑しています)で食事をするもよし、点在する出店(ワインや、ソーセージ、ポテトといったおしゃれな出店が多い)でテイクアウトするもよし、まだ今週いっぱいは楽しめると思いますので、皆様もお時間があれば、是非お出かけ下さい。

    目黒川の桜

     

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    2016.04.01

    「忘れられる権利」 〜ネット検索結果の削除を認めた事例

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    女子高校生に対する児童買春の罪で、3年余り前に罰金50万円に処せられたことのある男性が、グーグル検索で自分の住所と氏名を入力して検索すると、その逮捕歴に関する記事が検索結果として表示されてしまうことから、「更生を妨げられない利益」が違法に侵害されているとして、グーグルに対し、検索結果の削除を求める仮処分を申立て、認められました。今回は、その決定(さいたま地裁平成27年12月22日決定)をご紹介させていただきます。

     

    裁判所は、まず検索エンジンに対する検索結果の削除請求を認めるべきか否かは、諸般の事情を総合考慮して、更生を妨げられない利益について受忍限度を越える権利侵害があるといえるかどうかによって判断すべきであるとしました。

     

    これに対し、グーグル側は、検索結果の削除は、元サイトや検索結果の表示内容が明らかに社会相当性を逸脱することが明らかで、元サイトの管理者等に表現の削除を求めていては回復しがたい重大な損害が生じるなどの特段の事情があるときしか認められるべきではないとか、元サイトへの管理者等への削除請求を原則とすべきであるなどと主張しましたが、これら主張は認められませんでした。

     

    その上で、裁判所は、一度は、逮捕歴を報道され社会に知られてしまった犯罪者といえども、人格権として私生活を尊重されるべき権利を有し、更生を妨げられない利益を有するのであるから、犯罪等の性質等にもよるが、ある程度の期間が経過した後は過去の犯罪を社会から「忘れられる権利」を有するべきであると判示しました。

     

    そして、わが国の刑事政策では、公的期間であっても前科に関する情報を一般に提供するような仕組みをとっていないこと、インターネットが広く普及した現代社会においては、ひとたびインターネット上に情報が表示されてしまうと、その情報を抹消し、社会から忘れられることによって平穏な生活を送ることが著しく困難になってしまうことも、考慮して判断する必要があるとして、罪を償ってから3年余りが経過した男性について、検索エンジンの公共性を考慮しても、更生を妨げられない利益が社会生活において受忍すべき限度を越えて侵害されているとして、検索結果の削除を認めたのです。

     

    なお、裁判所は、保全の必要性について、当該検索結果を削除することは、グーグルにおいて日頃行っている削除依頼に対する任意の対応と大きな違いはなく、情報処理システム上の対処が必要なだけで、グーグルに実質的な損害を生じさせるものではないとも判示しています。

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    2016.03.16

    弁論準備手続きとは?

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    民事訴訟が始まって何回かの裁判期日は、口頭弁論といって公開の法廷で審理が行われますが、原告と被告との間で、主張と反論が1、2往復したあたりで、弁論準備手続きに付されるのが一般的です。

     

    この弁論準備手続きというのは、公開の法廷ではなく、書記官室近くにある準備室(小さな会議室のような部屋)において、裁判官と原告・被告両当事者がテーブルを囲んで、争点や、今後の裁判の進め方について話し合いをする手続きです。文書の証拠調べをすることもできます(民事訴訟法第170条2項)。

    何回か期日を重ね、主張や立証もほぼ尽きると、和解についての話合いが行われることもあります。

     

    弁論準備手続きは、訴訟当事者だけでなく、会社の担当者や、当事者の付き添いで来た親族等も傍聴することができます。公開ではないのに、随分緩やかに傍聴できるんだなぁと今まで思っていましたが、民事訴訟法にちゃんと根拠条文がありました。第169条2項に「裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。ただし、当事者が申し出た者については、手続を行うのに支障を生じるおそれがあると認める場合を除き、その傍聴を許さなければならない。」とあり、当事者が申し出た者については、原則、傍聴を許さなければならないんですね。

     

     

     

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