虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

損保会社の担当者から、ペットが死亡した時に認められる損害賠償について質問を受けましたので、裁判例の傾向をリサーチしてみました。

 


 

 

●認められる損害

 

1 慰謝料

 

仙台地裁平成29年1月13日判決(裁判例①)は、7年8ヶ月もの長期間にわたり、家族の一員として愛着を抱いて飼育していたところ、健康体であったチワワが事故で突如として死亡したものであるから、多大な精神的苦痛を被ったとして、飼い主である夫婦それぞれにつき13万円の慰謝料を認めています。

 

大阪地裁平成27年2月6日判決(裁判例②)も、チワワの購入額が7万8000円から38万2000円と幅があること、死亡したチワワが国際公認血統証明書付きであったこと、約15年間家族の一員として飼育されてきたことに照らし、合計18万円の慰謝料が相当であると判示しています。

 

東京地裁平成平成25年8月21日判決(裁判例③)も、犬などの愛玩動物は、飼主が家族の一員であるかのように扱い、飼主にとってかけがえのない存在となっていることが少なくない(公知の事実)であるなどとして、飼い主である夫婦各自に10万円の慰謝料を認めています。

他方、同判決は、約2年間という飼育期間及びその態様など当該訴訟に顕れた事情を斟酌しても、原告らが主張する各自100万円の慰謝料は高額にすぎると言わざるを得ないと判示しています。

 

以上からして、ペットが死亡した場合の慰謝料は、飼い主である夫婦1人あたり、10〜20万円程度が相場でしょう。

 

2 葬儀費用等

 

裁判例②は、動物霊園に支払った葬儀費用2万3700円を損害として認めています。

 

また、裁判例③も、死亡した犬の葬儀費用5万3550円、49日の法要費用1万5000円を事故と相当因果関係の認められる損害と判示しています。

 

3 弁護士費用

 

判決に至った場合、他の損害賠償請求訴訟と同様、上記の損害賠償認定額の1割程度が、弁護士費用相当の損害として認められています。

 


 

 

●認められない損害

 

4 ペットの購入代金

 

裁判例①は、死亡時8歳の成犬であったチワワについて、財産的価値を算定するのは困難であるとして、ペットの購入代金相当額の損害を認めていません。

 

また、裁判例②も、チワワの購入額については、その死亡により支出したものではないとの理由で、ペットの購入額を損害としては認めていません。