霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

 

弁護士費用(着手金・報酬金)は、依頼する事件の経済的利益の額の何パーセントという形で算定されるのが一般的です。弁護士業界共通の報酬規程は10年くらい前に撤廃されたのですが、今でも多くの法律事務所で、その報酬規程と同様の規程をおいているものと思われます。

そこで、この「経済的利益」の額が、どのように算定されるのか、若干ご説明したいと思います。

 

①金銭債権の場合

売買代金や、損害賠償の請求のように金銭債権を請求する場合、着手金については、相手方に対し請求し、あるいは相手方から請求される額(利息及び遅延損害金を含みます)が経済的利益の額とされます。

また、その報酬金については、交渉や訴訟の結果、認められた額(金銭を請求する側の場合)、あるいは相手方の請求額から減額できた額(金銭を請求される側の場合)が、経済的利益の額となります。

もっとも、そもそも相手方の請求額が不当に高すぎるような場合、それをそのまま基準に算定すると弁護士費用の額も高くなってしまいます。そこで、そのような場合には、紛争の実態に相応する額にまで減額するのが良心的な弁護士の対応だと思います。

 

②動産・不動産の場合

所有権に関する紛争については、対象たる物の時価相当額、占有権・賃借権・使用借権に関する紛争については、対象たる物の時価の2分の1の額が経済的利益の額となります。

但し、建物についての紛争の場合には、建物の時価相当額(賃借権等に関する紛争の場合にはその2分の1)のほかに、敷地の時価の3分の1の額を加算した額が経済的利益の額となります。

 

③賃料増減額請求の場合

増減額分の7年分の額が経済的利益の額とされます。

 

④遺産分割請求の場合

対象となる相続分の時価相当額が経済的利益の額とされます。但し、分割の対象となる財産の範囲及び相続分について争いのない部分については、その相続分の時価相当額の3分の1の額が経済的利益の額とされます。

 

⑤遺留分減殺請求の場合

対象となる遺留分の時価相当額が経済的利益の額とされます。

 

⑥算定不能の場合

以上のような規程から、経済的利益の額を算定できない事件については、経済的利益の額を800万円とみなす場合もありますが、このような場合には、事件処理に費やすであろう時間・労力、依頼者が得られる利益等を総合考慮して、弁護士費用の額を決めるのが一般的だと思います。