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    2019.07.11

    100本の薔薇

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    本日は私の記念日なのですが、

    顧問先から、お祝いに、(数えていませんが、おそらく)100本の薔薇をいただきました。

     

    薔薇1

     

    感激! 感動しました!

    このような大輪の花束をいただいたのは、生涯で初めてです。

     

    薔薇2

     

    このような気持ちを、多くの方々にお裾分けできるよう、

    これまでも、これからも、変わらず、

    人として正しく、弁護士として、きちんとした仕事を、一生懸命していくだけですが、

    日々精進して参ります。

     

     

     

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    2019.07.08

    【不動産】借地権の譲渡許可が認められる要件

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    私は、借地権の買取をしている不動産会社の顧問弁護士をしておりますが、譲渡を予定している借地人の代理人として、地主の方と借地権譲渡の交渉をすると、「譲渡承諾はしない。土地を使わないなら返して欲しい。」とご主張される地主の方が多くいらっしゃいます。

     

    借地権譲渡

     

    確かに、借地人は、自分で借地を使用する必要性が少なくなったから、第三者に対し借地上の建物を譲渡しようとするわけですが、借地人が自分で借地を使用する必要性が少なくなったことが、賃貸借期間内における賃貸借の終了事由になるわけではありません。

     

    借地権の存続期間が満了する場合においては、更新拒絶の要件として、地主及び借地人それぞれの土地を使用する必要性が考慮されますが(借地借家法第6条)、借地権譲渡の当否においては、これら必要性が考慮されるわけではありません。

     

    地主が承諾しない場合には、裁判所に対し、地主の承諾に代わる許可を求める申し立てをすることになるわけですが、その要件は、第三者が賃借権を取得しても、「借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず」借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないとき、というものです(同法第19条1項)。

     

    ■「借地権設定者に不利となるおそれ」


     

     

    「借地権設定者に不利となるおそれ」は、一般的には、借地権譲受人の資力(経済的信用)と借地権譲受人の人的信頼性とから判断されます。

     

    借地権譲受人の資力とは、地代を確実に支払うことができるか否かということですが、借地権付き建物を購入しようとする者は相応の資力を有していることが通常であり、現実に資力が問題となる事案は少ないと考えられます。

     

    なお、借地非訟手続において、この点を証明するため、当事務所では、譲受予定者の決算報告書を書証として提出しています。

     

    次に、借地権譲受人の人的信頼性は、地主の主観的な感情によるものではなく、例えば、譲受人が暴力団関係者であったり、風俗営業や騒音・振動・悪臭を伴う営業をしている者であるか否かといった、客観的な社会的信用の面から判断されます。

     

    この点で不利になるおそれがあるとした裁判例として、譲受予定者が以前に地主所有の土地を不法占拠し、地主が譲受予定者に対する訴訟と強制執行を余儀なくされたことによって、両者間の信頼関係を維持することができないとされた事案があります(東京地裁昭和51年9月24日決定)。

     

    ■借地に関する諸事情の考慮


     

     

    裁判所は、借地権譲渡許可の裁判をするに当たって、「賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡を必要とする事情その他一切の事情」を考慮する必要があります(同法第19条2項)。

     

    借地権を譲渡しても、「借地権設定者に不利となるおそれ」がない場合でも、これら一切の事情を考慮して、申し立てが棄却される場合もあるということです。

     

    賃貸借の残存期間が1、2年程度と短い場合には、更新拒絶の正当事由の有無を考慮して、許否が決せられます。

     

     

     

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    2019.05.30

    【不動産】借地権の譲渡・許可手続

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

     

    私は、借地上の建物の買取をしている不動産業者の顧問弁護士をしており、借地権の譲渡について依頼を受けることが多々あります。そこで、今回は、借地権の譲渡許可手続きについて、基本的なことをご説明させていただきます。

     

    3棟の建物

     

     

    ■譲渡承諾・許可の必要性

     


     

     

    賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を第三者に譲渡することができません(民法第612条1項)。無断で譲渡してしまうと、賃貸借契約を解除されるおそれがあります。

     

    そこで、賃借人が賃借権を譲渡する場合には、賃貸人の承諾を得る必要があるのですが、借地権に関しては、地主(賃貸人)が承諾しない場合には、地主に代わって、裁判所に、譲渡の許可を出すよう求める手続きがあります。「借地非訟」と呼ばれる手続きです。

     

     

    ■当事者


     

     

    借地権の譲渡許可申立をすることができるのは、第三者に対し借地権付き建物を譲渡しようとしている賃借人です。賃借人から、建物を譲り受けようとしている第三者(譲受人)は申し立てをすることができません。

     

    借地契約の一方当事者が複数いる場合(共同賃貸、共同賃借)は、当事者全員を当事者として申し立てをしなければなりません。もっとも、賃貸人が複数で、そのうち一部からすでに承諾を得ているときは、それ以外の賃貸人を相手方とすることができます。ただし、譲渡承諾だけでなく、借地条件を変更する付随処分をする場合には、賃貸人全員を相手方としなければなりません。

     

     

    ■申し立ての時期


     

     

    譲渡許可の申立は、建物の譲渡前にしなければなりません。建物の譲渡前とは、建物の所有権移転登記、あるいは建物の引渡しのいずれもがなされる前のことで、それよりも前に申立をしなければなりません。

     

     

    ■譲渡許可の要件

     


     

     

    譲渡許可の要件は、第三者が賃借権を取得しても、「賃借権設定者(地主)に不利となるおそれがない」にもかかわらず、地主が譲渡承諾しない場合です。

     

    「地主に不利となるおそれ」があるか否かは、借地権譲受人の資力や、譲受人が暴力団関係者であったり、風紀上好ましくない営業をしようとする者であるかといった客観的な社会的信用の面から、判断されます。地主の主観的な感情によって判断されるものではありません。

     

     

    ■財産上の給付


     

     

    譲渡許可が出される場合、借地人から地主に対する財産上の給付(譲渡承諾料)として、借地権価格の10%程度の支払いが命じられるのが一般的です。

     

     

    ■地主の先買権(介入権)


     

     

    借地人が譲渡許可の申立をした場合には、地主が第三者への譲渡を阻止して、自己に優先的に、借地権付き建物を譲渡するよう申立をすることができます。この権利は、地主の「先買権」とか「介入権」と呼ばれています。

     

    地主が介入権を行使した場合、裁判所は、地主への譲渡を命ずるのが原則です。この場合の対価は、建物及び借地権価格から、譲渡承諾料相当額(借地権価格の10%)を差し引いた額とされるのが一般的です。

     

     

    ■当事務所の方針


     

     

    一般的に、不動産を購入する場合には、住宅ローンを利用することがほとんどでしょうが、ローンを利用する場合には、金融機関から、地主の抵当権設定同意書(融資承諾書)を求められます。

     

    しかし、借地非訟による場合には、地主の同意が得られないことが多く、事実上、ローンの利用ができず、借地権付き建物を処分できなくなってしまうことがあります。

     

    そこで、当事務所では、借地飛翔の申立をする前に、できる限り、地主との直接交渉により、任意の譲渡承諾が得られるように、努力しています。

     

     

     

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    2019.02.19

    【離婚】不貞相手に対する、離婚を理由とする慰謝料請求

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    本日(平成31年2月19日)、不貞行為の慰謝料請求に関し、注目すべき最高裁判決が出ました。

     

    不貞相手に対する、離婚を理由とする慰謝料請求を否定したのです。第1審でも、控訴審でも、慰謝料請求が認められたものを、最高裁が破棄自判したのが衝撃的でした。

     

    慰謝料請求

     

     

    ■事案の概要


     

     

    Y(不貞相手)は、平成21年6月以降、A(妻)と不貞行為に及ぶようになりました。

    平成22年5月ころ、X(夫)は、YとAとの不貞行為を知りましたが、その頃、AはYとの不貞関係を解消し、Xとの同居を続けました。

    それから4年近くが経過した平成26年11月ころ、AとXとは別居し、平成27年2月に調停離婚が成立しました。

    その後、XがYに対し、不貞行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったとして、離婚に伴う慰謝料請求訴訟を提起したものです。

     

    Xが、離婚をやむなくされたことを理由とし、不貞行為自体を理由とする慰謝料請求をしなかったのは、YとAとの不貞行為を知ってから3年以上が経過しており、消滅時効の援用をされたからと考えられます。

     

     

    ■最高裁判決


     

     

    最高裁は、次のように判示して、不貞相手に対する、離婚を理由とする慰謝料請求を、原則として、否定しました。

     

    「離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である。」

     

    「したがって、夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。」

     

    一般論として、不貞相手に対する、不貞行為それ自体を理由とする慰謝料請求は認めていることに注意が必要です。これを否定しているわけではありませんので、勘違いしないようにしてください。

     

    そして、不貞相手が例外的に、夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負う場合を、「当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。」と判示しました。

     

     

    ■考察


     

     

     

    上記のような特段の事情が認められるケースは極めて例外的であり、今後、不貞相手に対し、夫婦が離婚したことを理由とする慰謝料請求をするのは難しくなるでしょう。

     

    不貞行為が原因(の1つ)として、夫婦が離婚するに至ったことは、慰謝料額を決める(増額する)考慮要素として主張するしかありません。

     

    いずれにせよ、配偶者の不貞行為を知った時は、消滅時効にかかる前に慰謝料請求すべきです。

     

     

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    2019.02.14

    【企業法務】顧客情報の利用は、不正競争防止法に違反にするか?

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    同業他社を退職した従業員を採用したところ、その同業他社から、顧客情報を利用して営業活動を行なっており、これが不正競争防止法に違反するなどと警告を受けた。・・・そんな相談が顧問先から時々寄せられます。 ここでいう顧客情報とは、取引先の名称や住所、電話番号、ファックス番号、担当者の氏名、メールアドレスなどです。

     

    営業秘密

     

    顧客情報の利用が不正競争防止法に違反するか否かは、顧客情報が同法の保護対象となる「営業秘密」に該当するか否かによります。「営業秘密」に該当しなければ、不正競争防止法違反に問うことはできません。

     

     

    ■「営業秘密」とは?


     

     

    不正競争防止法における「営業秘密」とは、次の3つの要件を全て満たすものとして定義されています(第2条6項)。

     ① 秘密として管理されていること(秘密管理性)

     ② 事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)

     ③ 公然と知られていないものであること(非公知性)

     

    このうち、紛争において最も争点となるのは、①の秘密管理性です。

     

     

    ■秘密管理性を満たす場合とは?


     

     

    秘密管理性が認められるには、会社や経営者が主観的にその情報を秘密にしたいと考えているだけでは足りません。その情報が客観的に秘密として管理されていると認められる状態にある必要があります。

     

    裁判例では、秘密管理性の判断にあたり、次の2つの要素が考慮されています。

     イ 当該情報にアクセスできる者が制限されていること(アクセス制限)

     ロ 当該情報にアクセスした者が秘密であることを認識できるようにされていること(認識可能性)

     

    経済産業省の営業秘密管理指針(平成27年1月全面改訂)でも、これら2つが重要な要素とされていますが、それぞれ別個独立の要件ではなく、前者の「アクセス制限」は後者の「認識可能性」を担保する一つの手段であると考えられると説明されています。

     

    したがって、情報にアクセスした者が秘密であると認識できる場合には、十分なアクセス制限がないということだけを理由に秘密管理性が否定されることはないかもしれません。もっとも、何らの秘密管理措置が取られていない場合には、秘密管理性要件は満たしません。

     

     

    ■裁判例


     

     

    ここで仕入先情報(仕入先の名称や住所、電話番号、ファックス番号、担当者の氏名、メールアドレス、取扱商品の特徴)に関する、不正競争防止法上の「営業秘密」該当性が問題になった裁判例(東京地裁平成20年11月26日判決)をご紹介させていただきます。

     

    この裁判例は、秘密管理性の認定においては、主として、認識可能性とアクセス制限が判断要素となる旨、従前の判断基準の枠組みを踏襲した上で、

     

     ・原告においては、アルバイトを含め従業員でありさえすれば、そのユーザーIDとパスワードを使って、サーバーに接続されたパソコンにより、仕入先情報が記載されたファイルを閲覧することが可能であったこと

     ・そのファイル自体には、情報漏洩を防ぐための保護手段が何ら講じられていなかったこと

     ・従業員との間で締結した秘密保持契約も、その対象が抽象的であり、仕入先情報がそれに含まれることの明示がされていないこと

     ・その他、原告において、従業員に対して、本件仕入先情報が営業秘密に当たることについて、注意喚起をするための特段の措置も講じられていなかったこと

     ・仕入先情報の内容の多くが、インターネット等により一般に入手できる情報をまとめたものであること

     ・証拠上、原告に、個々の仕入先を秘匿しなければならない事情も窺われないこと

     

    などを理由に、仕入先情報が不正競争防止法上の「営業秘密」に該当することを否定しています。

     

     

     

     

    ■秘密保持契約との関係


     

     

     

    会社と従業員とが秘密保持契約を締結している場合には、顧客情報の利用が不正競争防止法に違反するか否かとは別に、秘密保持契約に違反するか否かが問題となります。

     

    この点については、別の機会に改めてご説明させていただきます。

     

     

     

     

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    2018.12.28

    年末年始休業のお知らせ

     

    当事務所は、平成30年12月29日(土)から、平成31年1月6日(日)まで休業いたします。

     

    皆様のご健勝と益々のご発展を心よりお祈りいたしております。

    何卒、よいお年をお迎えください。

    新年もよろしくお願い申し上げます。

     

    虎ノ門桜法律事務所

    代表弁護士 伊澤大輔

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    2018.12.21

    【損害賠償】経済的全損の場合に、代車料が認められる期間

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    事故車両の修理費用が、事故車両の時価額*を上回る場合には、原則として、修理費用の請求はできません。この場合には、経済的全損として、車両時価額の範囲でしか、損害賠償請求することはできません。

     

    *正確にいうと、自動車税や登録費用、車庫証明費用、納車費用、廃車費用など、別途新たな車両の購入にかかる諸費用も含みます。

     

    このような経済的全損の場合には、新たな車両を購入する必要が出てきますが、新たな車両が納車されるまでの間、代車を利用した場合、代車料の損害賠償請求も認められるでしょうか。認められるとして、どのくらいの期間認められるでしょうか。

     

    事故車両

     

    ■原則、30日程度


     

     

    大阪地裁平成13年6月8日判決は、代車の必要期間を買換相当期間によるべきであるとし、その期間は、購入車両の選択、諸手続の上、納車されるまでの期間を考慮して30日が相当であると判示しています。大阪地裁平成24年3月26日判決も同様の判断をしています。

     

    もっとも、保険会社による事故車両の調査や、修理費用の見積もりをとり、経済的全損か判断するのに時間がかかったような場合には、+10日〜15日程度の代車料が認められる場合もあります。

     

     

    ■仮定的代車料の問題


     

     

    それでは、代車が必要であったとしても、実際には、代車を使用しなかった場合や、他の所有車を使用したり、他人から無償で自動車を借りて使用した場合にも、代車料を請求することはできるでしょうか(いわゆる仮定的代車料の問題)。

     

    このような場合には、現実には、代車料負担の損害は発生していないから、基本的に、請求は認められないというのが裁判例(東京地裁平成12年8月23日判決、同平成13年1月25日判決)です。

     

     

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    2018.11.19

    新しいデミタスカップが入荷しました。

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    中目黒にある、私のお気に入りのカフェでは、通常のコーヒーカップよりも、ふた回りくらい小さいデミタスカップで、淹れたてのコーヒーが提供されます。

     

    カラフルだったり、美しい模様だったり、毎回違ったデミタスカップで出てくるのですが、最近、それを眺めているうちに、「当事務所でも、素敵なデミタスカップで、お客様をおもてなししたい!」という気持ちが強くなり、間も無く、当事務所が開設2周年を迎えるお礼の意味も込めまして、先週末、揃えてまいりました。

     

    ウェッジウッドと、ヘレンドのティーカップ&デミタスカップです。

     

    ご相談の後、コーヒーを飲みながら、寛いでいただければ幸いです。

     

    2つのティーカップ

     

    デミタス1

     

    デミタス2

     

    2つのデミタスカップ

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    2018.10.25

    【相続】死亡退職金は遺産分割の対象になるか?

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    最近ご相談を受けた中で、死亡退職金の遺産性が問題になった事案がありましたので、今回は、裁判実務の傾向を整理しておきたいと思います。

     

    ちなみに、「死亡退職金」は私企業等の従業員が死亡した時に支給されるもので、公務員が死亡した場合に支給されるものは「死亡退職手当」、私企業の役員が死亡したときに支給されるものは「死亡退職慰労金」と呼ばれています。

     

    退職金

     

     

    ■私企業等の従業員の「死亡退職金」


     

     

    私企業等の従業員の死亡退職金の法的性質や遺産性は、一律に決することができず、具体的な事案に応じて個別に判断する必要があります。

     

    死亡退職金に関する支給規定があるか否か確認する必要があり、支給規定がある場合には、支給基準受給権者の範囲又は順位などの規定により、支給規定がない場合には、従来の支給慣行や支給の経緯等を考慮して、個別に、遺産性を検討することになります。

     

    一般的に、支給規定の受給権者の範囲又は順位が、民法の遺族の範囲及び順位と異なる定めがなされている場合には、遺産性が否定されることが多いです。

     

    私立の学校法人の職員の死亡退職金について、最高裁昭和60年1月31日判決は、死亡退職金の支給を受ける遺族は、職員の死亡当時、主としてその収入により生計を維持していた者でなければならないこと、第一順位は配偶者であること(内縁関係を含む)、配偶者があるとき、子は全く支給を受けないことなど、民法の規定する相続人の範囲及び順位決定の原則とは著しく異なった定め方をしていることから、遺族の生活保障を目的とし、遺族固有の権利であるとして、遺産性を否定しています。

     

     

    ■公務員の「死亡退職手当」


     

     

    受給者固有の権利であり、遺産にはなりません(遺産分割の対象にはなりません)。

     

    国家公務員退職手当法は、受給権者を遺族とし、受給権者の範囲及び順位を法定しており、受給権者の範囲及び順位は民法の定める相続人の範囲及び順位と異なっています。これは遺族の生活保障を目的としていると解され、遺産性はないとされています。

     

    地方公務員に対する死亡退職手当についても、国家公務員退職手当法と同様の内容を定めているときには遺産性が否定されます(最高裁昭和58年10月14日判決)。

     

     

    ■私企業の役員の「死亡退職慰労金」


     

     

    その遺産性は、支給規定、定款の定め、支給決議等の内容と支給の実情等に検討することになります。

     

    広島高裁平成12年2月16日判決は、「死亡した会社役員に対する退職慰労金が同人の相続財産に含まれるか否かは、その支給を決定した総会決議が、同人の相続財産とする趣旨で同人の相続人を支払対象者としてなされたか否かによって決せられるところ、本件決議は、本件退職慰労金の受給者が同人の内縁の妻及び法律上の妻のいずれかであることを当然の前提としているから、同人の相続財産ということはできない。」旨判示しています。

     

     

     

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