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    2019.05.30

    【不動産】借地権の譲渡・許可手続

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

     

    私は、借地上の建物の買取をしている不動産業者の顧問弁護士をしており、借地権の譲渡について依頼を受けることが多々あります。そこで、今回は、借地権の譲渡許可手続きについて、基本的なことをご説明させていただきます。

     

    3棟の建物

     

     

    ■譲渡承諾・許可の必要性

     


     

     

    賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を第三者に譲渡することができません(民法第612条1項)。無断で譲渡してしまうと、賃貸借契約を解除されるおそれがあります。

     

    そこで、賃借人が賃借権を譲渡する場合には、賃貸人の承諾を得る必要があるのですが、借地権に関しては、地主(賃貸人)が承諾しない場合には、地主に代わって、裁判所に、譲渡の許可を出すよう求める手続きがあります。「借地非訟」と呼ばれる手続きです。

     

     

    ■当事者


     

     

    借地権の譲渡許可申立をすることができるのは、第三者に対し借地権付き建物を譲渡しようとしている賃借人です。賃借人から、建物を譲り受けようとしている第三者(譲受人)は申し立てをすることができません。

     

    借地契約の一方当事者が複数いる場合(共同賃貸、共同賃借)は、当事者全員を当事者として申し立てをしなければなりません。もっとも、賃貸人が複数で、そのうち一部からすでに承諾を得ているときは、それ以外の賃貸人を相手方とすることができます。ただし、譲渡承諾だけでなく、借地条件を変更する付随処分をする場合には、賃貸人全員を相手方としなければなりません。

     

     

    ■申し立ての時期


     

     

    譲渡許可の申立は、建物の譲渡前にしなければなりません。建物の譲渡前とは、建物の所有権移転登記、あるいは建物の引渡しのいずれもがなされる前のことで、それよりも前に申立をしなければなりません。

     

     

    ■譲渡許可の要件

     


     

     

    譲渡許可の要件は、第三者が賃借権を取得しても、「賃借権設定者(地主)に不利となるおそれがない」にもかかわらず、地主が譲渡承諾しない場合です。

     

    「地主に不利となるおそれ」があるか否かは、借地権譲受人の資力や、譲受人が暴力団関係者であったり、風紀上好ましくない営業をしようとする者であるかといった客観的な社会的信用の面から、判断されます。地主の主観的な感情によって判断されるものではありません。

     

     

    ■財産上の給付


     

     

    譲渡許可が出される場合、借地人から地主に対する財産上の給付(譲渡承諾料)として、借地権価格の10%程度の支払いが命じられるのが一般的です。

     

     

    ■地主の先買権(介入権)


     

     

    借地人が譲渡許可の申立をした場合には、地主が第三者への譲渡を阻止して、自己に優先的に、借地権付き建物を譲渡するよう申立をすることができます。この権利は、地主の「先買権」とか「介入権」と呼ばれています。

     

    地主が介入権を行使した場合、裁判所は、地主への譲渡を命ずるのが原則です。この場合の対価は、建物及び借地権価格から、譲渡承諾料相当額(借地権価格の10%)を差し引いた額とされるのが一般的です。

     

     

    ■当事務所の方針


     

     

    一般的に、不動産を購入する場合には、住宅ローンを利用することがほとんどでしょうが、ローンを利用する場合には、金融機関から、地主の抵当権設定同意書(融資承諾書)を求められます。

     

    しかし、借地非訟による場合には、地主の同意が得られないことが多く、事実上、ローンの利用ができず、借地権付き建物を処分できなくなってしまうことがあります。

     

    そこで、当事務所では、借地飛翔の申立をする前に、できる限り、地主との直接交渉により、任意の譲渡承諾が得られるように、努力しています。

     

     

     

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