不動産問題

  • cat4

    2015.05.29

    借地上の建物を第三者に譲渡したいのですが、地主が承諾しません。どうしたら、いいですか?

    第三者が借地権を取得しても、地主に不利になるおそれがないにもかかわらず、地主が承諾しない場合には、裁判所に対し、地主の承諾に代わる許可(代諾許可)を申し立てることができます(借地借家法第19条1項)。

     

    この代諾許可を求める手続きは、地方裁判所において行われますが、借地非訟手続きと呼ばれる通常の訴訟とは異なる手続きで行われます。審理期間は通常の訴訟よりも短く申し立てから6ヶ月程度で結論が出ることが多いです。

     

    代諾許可申立てを行うにあたり、問題になるのは以下のとおりです。

     

    ① 建物が存在すること

    建物が取り壊されるなどして更地になってしまっているときには、譲渡すべき建物が存在しないので、代諾許可を申し立てることができません。くれぐれも、代諾許可の申し立て前に、建物を取り壊したりしないよう注意して下さい。

     

    ② 建物の譲受人が具体的に特定していること

    裁判所は、借地権を譲渡しても地主に不利となるおそれがないか否かを判断しますので、その前提として、建物の譲受人(買主)が決まっている必要があります。したがって、建物を売却したいが、まだ買い手は見つかっていないという段階では、代諾許可の申し立てをすることができません。買い手候補を見つけ、売買契約を完了させる前に、申し立てをする必要があります。

     

    ③ 地主に不利になるおそれがないこと

    建物の譲受人が、地代を滞納するおそれがない(それだけの資力がある)ならば、一般的に、地主が不利になるおそれがないということになりますが、その他に、譲受人が暴力団等反社会的勢力ではないか、建物が違法な目的、いかがわしいことに用いられないかが問題となります。

     

    ④ 借地条件の変更

    当事者間の利益の衡平を図るために、代諾許可にあたり、賃料額等借地条件の改定が行われることがあります。

     

    ⑤ 財産上の給付

    代諾許可されるほとんどの事例において、承諾料の支払いが条件とされます。東京地裁の場合、借地権価格の10%程度を基本として、個別事情を考慮して増減されます。なお、譲受人が建物所有者の妻や子など推定相続人である場合には、建物所有者が死亡すれば、相続により当然に取得するという関係にあることを考慮し、借地権価格の3%程度が多いとされています。

     

    ⑥ 地主の優先譲受権(介入権)

    借地人から、代諾許可申立てがなされたとき、地主は、自ら建物の譲渡及び借地権の譲渡を受ける旨の申し立てをすることができます。この申し立てがあった場合、裁判所は、相当の対価を定めて、これを命じることができます(同条3項)。

     

    霞ヶ関パートナーズ法律事務所
    弁護士  伊 澤 大 輔
    ☎ 03-5501-3700
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  • cat4

    2015.05.27

    建物が第三者に譲渡された場合、賃貸借契約はどうなりますか?

    建物の賃借権は、その登記がなくても、建物の引渡を受けていれば、新所有者にも対抗できます(借地借家法第31条)。その結果、建物の所有権の移転に伴い、当然に、賃貸借契約も新所有者に承継され、新所有者を新たな賃貸人として継続します。

     

    賃貸人たる地位の移転・承継について、原則として、賃借人の同意は不要と解されています。賃貸人の地位の移転には、賃貸人の賃借人に対する義務の移転を伴いますが、その義務の履行は、誰が賃貸人であっても、その履行に大きな差異を生じるものではないため不利益は大きくなく、通常、賃借人にとって、新所有者に賃貸借契約が承継される方が有利だからです。

     

    新所有者に承継される賃貸借契約の内容は、賃料額や賃貸期間から特約に至るまで、すべて従前の契約と同じです。同一内容の賃貸借契約が当然に承継されますので、改めて新所有者との間で賃貸借契約書を巻き直す必要はありません。もっとも、実務的には、新所有者から、賃貸借契約書の巻き直しを求められることがあり、念のため従前の内容のものを巻き直すというのであれば問題ありませんが、契約内容の変更を伴うことがありますので、これに応じるかは慎重に判断すべきでしょう。契約書の巻き直しに応じる義務はなく、これを拒否したからといって、賃貸借契約の継続に支障をきたすことはありません。

     

    敷金も(所有権移転登記時点で未払賃料等の債務があればこれに充当され、その残額が)、新所有者に承継され、実際に旧所有者から新所有者に対し敷金の引継ぎがなされたか否かにかかわらず、差し入れた敷金は、退去後に、新所有者から返還を受けることになります。

     

    他方、賃借人が賃料を滞納し、既に未払い賃料が発生している場合、その賃料請求権は、建物の所有権の移転に伴い当然には承継されず、新所有者がこれを取得するには、別途、債権譲渡の合意とその手続きをとる必要があります。

     

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  • cat4

    2015.04.17

    賃料増減額請求権は、過去に遡って効力を生じさせることができますか?

    土地についても、建物についても、賃料増減額請求権は、「将来に向かって」行使することができる旨定められていますので(借地借家法第11条1項、32条1項)、過去に授受した賃料額が不相当であったとしても、過去に遡って、賃料の増額又は減額を請求することはできません。

     

    もっとも、これにかかわらず、当事者間でどのような合意をするかは自由ですので、当事者間の合意によって、過去の一定期間からの賃料額を増減し、精算することは、差し支えありません。

     

    このように、賃料増減額請求権は将来に向かってのみ効力が生じるため、いつ賃料増減額請求権を行使したかが問題になります。その行使は、相手方に対する意思表示によって行われ、書面に限らず、口頭でも行使することも可能ですが、後に争いになることを想定して、配達証明付きの内容証明郵便で行う方がよいでしょう。

     

    また、書面によって行使する場合、賃料増減の意思表示であることがわかればよく、賃料増減の根拠を示すことや金額を明示する必要はありません。しかし、裁判上、賃料増減額請求権を行使する場合には、請求の上限を画する必要から、訴状において金額を明示しなければなりません。

     

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  • cat4

    2015.04.16

    【サブリース】賃料減額請求の当否及び相当賃料を判断するために考慮される事情

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

    基本的にサブリースにも借地借家法が適用され、賃料増額・減額請求をすることができます。

     

    賃料増減額について、借地借家法第32条本文には、「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価値の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」と定められていますので、基本的に、これら事情が考慮されます。

     


     

    ■最高裁平成15年10月21日判決

     

    もっとも、最高裁平成15年10月21日判決(判例時報1844号50頁)は、サブリース契約が、賃借人の転貸事業の一部を構成するものであり、サブリース契約における賃料額及び賃料自動増額等に係る約定は、賃貸人が賃借人のために多額の資本を投下する前提となったものであって、これらの事情は契約当事者が当初賃料額を決定する際の重要な要素となった事情であるから、衡平の見地に照らし、賃料減額請求の当否及び相当賃料額を判断する場合に、重要な事情として十分に考慮されるべきである旨判示しています。

    この減額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては、賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであり、賃貸借契約において賃料額が決定されるに至った経緯や賃料自動増額特約が付されるに至った事情、とりわけ、当該約定賃料額と当時の近傍同種の建物の賃料相場との関係(賃料相場とのかい離の有無、程度等)、サブリース業者の転貸事業における収支予測にかかわる事情(賃料の転貸収入に占める割合の推移の見通しについての当事者の認識等)、賃貸人(オーナー)の敷金及び銀行借入金の返済の予定にかかわる事情等をも十分に考慮すべきであるとしているのです。

     


    ■下級審裁判例

     

    このように、サブリース契約に関しては、当初賃料額や賃料自動増額特約をはじめ契約に至った事情が重要な事情として考慮されるため、サブリース契約の締結に至るまで、賃貸借期間を通じて賃貸人に多額の収益が生じることを予測した収益試算表を前提として交渉が重ねられたことをもって、サブリース契約における賃料額は、賃貸人の収益を相当程度確保するものでなければならないと判示する裁判例も存在します(東京高裁平成23年3月16日判決)。

     

    裁判例(上記高裁判決、東京地裁平成20年6月24日判決等)では、賃料減額請求の当否や相当賃料額を判断する事情として、

     ① 当該不動産周辺の地域において、地価や賃料相場の下落傾向が続いていること。

     ② 固定資産税等の減額により、賃貸人の負担軽減があったこと。

     ③ 建物建設にかかる借入の金利引き下げにより、賃貸人の負担軽減があったこと。

     ④ 賃借人が賃貸人に支払う賃料額が、転貸賃料を上回る「逆ざや」状態が相当期間続いていること。

    などが考慮されていますが、これらと共に、サブリース契約が締結された事情や賃貸人の収益性確保が考慮されるのです。

      

     

     

     

  • cat4

    2015.04.15

    サブリースについても、賃料増減額請求権を行使することができますか?

    はい。行使することができます。

     

    かつてサブリース契約については、事業契約であって賃貸借契約ではないから、借地借家法第32条(賃料増減請求権)は適用されないなどと主張され、争われていましたが、最高裁平成15年10月21日判決(判例時報1844号50頁)が、その合意の内容は、賃貸部分を収益させ、その対価として賃料を支払うというものであり、賃貸借契約であることが明らかであるから、同条が適用されると判示し、一定の結論が出ています。

     

    ところで、サブリースでは、賃料自動増額特約(賃料について、×年ごとに、□%値上げするという特約)や、最低賃料保証特約が入っていることが多く、これら特約は賃料を減額しない旨の約束を含むと解されますが、これら特約が入っている場合にも、賃料減額請求権を行使することはできるのでしょうか。

     

    借地借家法第32条1項但し書きには、「一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」と定められており、一定期間増額しない旨の特約は有効ですが、これとは反対に、一定期間減額しない旨の特約があっても、減額請求ができると解されます。

     

    判例も、借地借家法第32条1項の規定は強行法規であり、賃料自動増額特約や、最低賃料保証特約によってもその適用を排除することができない旨判示しています(上記最高裁判例、最高裁平成15年10月23日判決等)。

     

    霞ヶ関パートナーズ法律事務所
    弁護士  伊 澤 大 輔
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  • cat4

    2015.04.10

    サブリースについて、賃貸人から、期間満了を理由に契約を終了させることができますか?

    サブリース契約にも、借地借家法の適用があり、賃貸人が契約の更新を拒絶するには、同法第28条に定めれた正当事由が必要になります。

     

    まずサブリース契約に借地借家法の適用があるか問題になります。サブリース契約は、実質的には業務委託契約であるから借地借家法の適用がないとして、争われることがありますが、最高裁平成15年10月21日判決(判例時報1844号37頁)によって、サブリース契約についても、借地借家法32条1項(賃料増減額請求権に関する規定)が適用があるとされ、この問題について、一応の決着がつきました。

     

    また、東京地裁平成24年1月20日判決(判例時報2153号49頁)も、サブリース契約について、建物部分を賃貸し、その対価として賃料を支払うというものであり、建物の賃貸借契約であることが明らかであるから、旧借家法1条の2の適用があり、契約の更新を拒絶するには、正当事由が必要であると判示しています。

     

    正当事由の有無は、具体的には、当事者双方の建物を使用する必要性の有無、程度に関する事情を最も重要な要素とし、これに加え、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、契約期間中の賃借人の不信行為、立退料の申出などを従たる要素として考慮して判断されます。サブリース契約の場合も、例外ではありません。

     

    そして、上記東京地裁判決は、原告(賃貸人)が、当該建物部分を使用する必要性として、自助努力によって収益を得る必要性があると主張したことに対し、その必要性とは、賃借人である被告を排除して、自ら直接の賃貸人となること等によって、自らがより高額の賃料を得たいというものであるところ、被告に対し賃料増額請求権の行使をすることによって相当な額に変更することが可能であること等から、被告に比して、原告において当該建物部分を使用する必要性は低いと判示しています。

     

    また、上記東京地裁判決は、原告が、自らが本社として当該建物を使用する必要性があると主張したのに対し、従前の協議や、訴訟前の調停及び訴状において、そのような主張をしていなかったこと、原告は当該建物のうち空いている部分を本社として使用していなかったこと、原告の現在の本社は原告の関連会社が所有している物件であることを認定し、原告において当該建物を本社として使用する必要性は低いと判示しています。

     

    他方、上記東京地裁判決は、被告の当該建物部分を使用する必要性を判断する場合、原則として、転貸してこれを転借人が使用する必要性があることもその考慮に含めてよいものと解されるところ、転借人が当該建物部分を使用する必要性があることは明らかである上、被告は、この転貸によって転貸料等の収入を得ており、また、建物の転貸条件付一括借上による賃貸業務等を目的とする被告にとって建物賃借権が存在することは事業上重要な部分を占めているものであり、被告において、転借人の利益又は自らの利益のいずれの面からも、当該建物部分を使用する必要性があるものといえると判示しています。

     

    こうして、上記東京地裁判決は、原告の更新拒絶には正当事由がないとして、原告の明け渡し請求を棄却しました。

     

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