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2015.03.31
離婚と年金分割
平成19年4月1日から、離婚時の年金分割制度が実施されましたが、この制度は、離婚することによって、自動的に年金が分割されるものではありません。
年金の分割をするには、夫婦(あるいは夫婦であった者の)間で、話合いにより、年金の按分割合を合意した上で、日本年金機構等に年金分割の請求をする必要があります。夫婦間で合意に至らない場合には、家庭裁判所に申し立てをし、按分割合を定めてもらうことができます。
この分割の対象になる期間は、婚姻期間中の被用者の保険料納付期間で、平成19年4月1日以降の離婚であれば、それ以前の婚姻期間全体が分割の対象になります。また、分割されるのは、保険料納付実績(対象期間標準報酬総額)であって、年金額そのものが分割されるわけではありません。
按分割合は、0.5(50%)が上限ですが、夫婦平等の観点から、夫婦の対象期間標準報酬総額を同額とする0.5の割合が基本となります。
これに対し、平成20年4月1日以降の専業主婦であった期間(これを特定期間といいます)については、その専業主婦からの、日本年金機構等に対する一方的な請求により、保険料請求記録等が当然に2分の1の割合で分割されます。特定期間については、夫婦間で分割の割合を個別に定める必要はありませんし、家庭裁判所が関与することもありません。ただし、それ以前の婚姻期間がある場合には、特定期間とそれ以前の婚姻期間とをあわせて合意分割することになります。
転職により、厚生年金や国家公務員共済年金など複数の被用者年金の対象となる方については、これらの年金ごとに年金分割請求をする必要があります。
年金分割請求を行うために必要な情報は、日本年金機構等から「年金分割のための情報通知書」によって提供されることになります。離婚調停や裁判上の和解離婚において、年金分割の合意をする場合には別紙として添付する必要がありますので、予め入手しておいた方がよいでしょう。
なお、年金分割の請求期限は、離婚等をした日の翌日から起算して2年間ですので、ご注意ください。
霞ヶ関パートナーズ法律事務所
弁護士 伊 澤 大 輔
☎ 03-5501-3700
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2015.03.19
財産分与の対象となる財産とは?
財産分与の対象となるのは、婚姻後、別居に至るまでの間に、夫婦が協力して取得した財産です。形式的に、どちらの名義になっているかを問いません。また、現金や預貯金に限らず、不動産、保険の解約返戻金、株式等の有価証券、自動車、貴金属等すべての種類の財産が財産分与の対象になります。
「夫婦が協力して取得した」の意味ですが、例えば、夫が会社に勤めて給料をもらい、妻が専業主婦として家事労働に従事している場合、夫の給料を原資とする預貯金等一切の財産は財産分与の対象になります。
これに対し、夫婦の一方が婚姻前から有していた財産や、婚姻後に取得した財産であっても、親族から贈与を受けたり、相続した財産は、特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産)として、財産分与の対象にはなりません(民法762条1項)。ただし、他方がその維持に協力・寄与したことにより、その特有財産の減少が免れたという場合には、その寄与度に応じた精算を求めることができます。
なお、夫婦どちらの特有財産か不明な財産は、夫婦の共有に属するものと推定されます(民法762条2項)。
子供名義の預貯金については、子供自身が小遣いやアルバイト代を貯めたような場合は、子供固有の財産ですので、財産分与の対象外ですが、親が子供の進学資金として子供名義で貯金しているような場合には、実際に管理している親の財産と同視して精算することになります。
霞ヶ関パートナーズ法律事務所
弁護士 伊 澤 大 輔
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2015.03.05
住宅ローンと財産分与
不動産の財産分与にあたり、住宅ローンが残っている場合、その方法としては、次の5つが考えられます(以下、便宜上、夫が不動産の所有者であり、かつローン名義人である場合を例として説明いたします)。
①不動産を第三者に売却して、その売却代金でローンを返済し、残りを夫婦双方で分配する方法
離婚する夫婦のいずれもが、不動産の取得を望まない場合に最適です。売却しますので、金額が確定し、簡便に処理することができます。
②夫が、そのまま不動産の所有権を持ち、そこに居住し続け、夫の取り過ぎ分は、妻に対する金銭等の支払いで調整する方法
不動産の所有権移転登記や、金融機関の同意が不要である点で、簡便です。取り過ぎ分の評価は、不動産の時価から、ローンの未払い残額を差し引くという方法によって行います。
③夫が、そのまま不動産の所有権を持ち続けるが、当面、妻がそこに居住し続ける必要があるため、妻に対し、不動産の使用借件ないし賃借権を設定する方法
ローンは引き続き夫が支払い続けるが、夫がその不動産への居住を望まず、むしろ妻がその不動産に居住することを望んでいる場合にこのような方法が考えられます。ただ、この方法をとる場合、使用借件による利益や、賃料相当額をいくらと評価すべきかが争点となりますし、離婚する夫婦間で継続的な権利義務関係が残ることや、将来、夫がローンの支払を滞納すると、抵当権を実行されて妻が明け渡しせざるを得ないリスクが残ります。
④妻が、不動産を全部取得して、その後、妻がローンの支払をする方法(もらいすぎ分は金銭等で精算します)
この方法をとる場合、金融機関との間で、債務者(ローン名義人)を変更する必要がありますが、金融機関は、妻に夫以上の支払能力があると判断しなければ、容易にローン名義人の変更には応じてくれないでしょう。そこで、次の方法が考えれます。
⑤妻が不動産を全部取得するが、ローン名義人は引き続き夫のままとする方法
夫が、将来ローンを負担して支払うことで、全体的に財産分与額の帳尻が合うのであれば、その方法でよいですが、それでは妻がもらいすぎになってしまうような場合には、妻から、夫に対し、そのローン債務額に見合う金額を、毎月支払い、夫がこれを原資として金融機関に対するローンの支払をすることが考えられます。
この他にも、不動産を夫婦の共有とする方法が一応考えられますが、あまりお勧めできません。不動産の利用や処分にあたり、将来、別途協議が必要となり、問題の先送りにしかならないからです。
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