一定の借金(債務)が考慮の対象となる余地はありますが、扶養義務者に債務があることから、直ちに婚姻費用の分担を免れたり、そのすべての債務が考慮さるわけではありません。

 

大阪高裁平成6年4月19日決定は、扶養義務者に多額の債務があっても、その生活が維持されている以上、生活保持義務を免れないと判示しています。

 

また、東京家裁平成27年6月26日審判は、基本的に、権利者及び義務者の収入に応じて、東京・大阪養育費等研究会による標準算定方式(算定表)に基づき、婚姻費用分担額を算定しており、扶養義務者(別居中の夫)が、実母から、子の学費等の借入をし、 実母に対し借金の返済をしていても、この借金の返済が婚姻費用分担義務に優先するとはいえず、上記婚姻費用分担額を左右するものとはならないとしています。

 

他方、仙台高裁平成16年2月25日決定は、夫婦が本来共同で負担すべき債務の一部を、婚姻費用の決定にあたり控除しています。

 

以上から、扶養義務者が、本来、夫婦が共同で負担すべき債務(例えば、住宅ローンなど)の一部を返済しているような場合には、それに応じて婚姻費用分担額が減額される可能性はありますが、扶養義務者が、それ以外の債務を返済しているからといって、それによって直ちに婚姻費用分担額が減免されることはないと思料します。

 

 霞ヶ関パートナーズ法律事務所
弁護士  伊 澤 大 輔
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