BLOG離婚問題
- 2016/01/07
-
夫に借金があることは、婚姻費用分担額の算定に影響を及ぼしますか。
一定の借金(債務)が考慮の対象となる余地はありますが、扶養義務者に債務があることから、直ちに婚姻費用の分担を免れたり、そのすべての債務が考慮さるわけではありません。
大阪高裁平成6年4月19日決定は、扶養義務者に多額の債務があっても、その生活が維持されている以上、生活保持義務を免れないと判示しています。
また、東京家裁平成27年6月26日審判は、基本的に、権利者及び義務者の収入に応じて、東京・大阪養育費等研究会による標準算定方式(算定表)に基づき、婚姻費用分担額を算定しており、扶養義務者(別居中の夫)が、実母から、子の学費等の借入をし、 実母に対し借金の返済をしていても、この借金の返済が婚姻費用分担義務に優先するとはいえず、上記婚姻費用分担額を左右するものとはならないとしています。
他方、仙台高裁平成16年2月25日決定は、夫婦が本来共同で負担すべき債務の一部を、婚姻費用の決定にあたり控除しています。
以上から、扶養義務者が、本来、夫婦が共同で負担すべき債務(例えば、住宅ローンなど)の一部を返済しているような場合には、それに応じて婚姻費用分担額が減額される可能性はありますが、扶養義務者が、それ以外の債務を返済しているからといって、それによって直ちに婚姻費用分担額が減免されることはないと思料します。
霞ヶ関パートナーズ法律事務所
弁護士 伊 澤 大 輔
☎ 03-5501-3700
izawa-law.com/
- 2015/03/31
- 2015/03/19
-
財産分与の対象となる財産とは?
財産分与の対象となるのは、婚姻後、別居に至るまでの間に、夫婦が協力して取得した財産です。形式的に、どちらの名義になっているかを問いません。また、現金や預貯金に限らず、不動産、保険の解約返戻金、株式等の有価証券、自動車、貴金属等すべての種類の財産が財産分与の対象になります。
「夫婦が協力して取得した」の意味ですが、例えば、夫が会社に勤めて給料をもらい、妻が専業主婦として家事労働に従事している場合、夫の給料を原資とする預貯金等一切の財産は財産分与の対象になります。
これに対し、夫婦の一方が婚姻前から有していた財産や、婚姻後に取得した財産であっても、親族から贈与を受けたり、相続した財産は、特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産)として、財産分与の対象にはなりません(民法762条1項)。ただし、他方がその維持に協力・寄与したことにより、その特有財産の減少が免れたという場合には、その寄与度に応じた精算を求めることができます。
なお、夫婦どちらの特有財産か不明な財産は、夫婦の共有に属するものと推定されます(民法762条2項)。
子供名義の預貯金については、子供自身が小遣いやアルバイト代を貯めたような場合は、子供固有の財産ですので、財産分与の対象外ですが、親が子供の進学資金として子供名義で貯金しているような場合には、実際に管理している親の財産と同視して精算することになります。
霞ヶ関パートナーズ法律事務所
弁護士 伊 澤 大 輔
☎ 03-5501-3700
izawa-law.com/