財産分与について、こんなお悩みありませんか?
- 財産分与額にについて、当事者間では話し合いがつかない。
- 配偶者がどれだけ財産を持っているかわからない。
- 年金分割の制度内容や、手続きの方法がわからない。
- 住宅ローンが残っている不動産は、どのように財産分与すればいいですか?
財産分与のポイント
Point1財産分与の対象財産
清算的財産分与は、夫婦で形成した財産を対象としますので、婚姻時から別居時までに形成された財産が対象になります。ただし、不動産や有価証券など財産分与の対象となる財産の価値の評価基準時は、合意や裁判時点が基準となります。夫婦の一方が婚姻前から保有する財産や、相続した財産は、「特有財産」として、基本的に財産分与の対象にはなりません。
退職金
退職金は賃金の後払的性質を有しますので、将来支給される退職金も清算的財産分与の対象となります。その分与額は、退職金総額×(婚姻期間/退職金基準期間)÷2で算定するのが一般的です。同居期間相当分だけを財産分与の対象とし、別居期間相当分を除く裁判例もみられます。
生命保険金
保険料の支払い中に離婚となった場合には、生命保険金は、一般に財産分与の対象にならないとされていますが、保険料が婚姻中夫婦の協力によって支払われてきたと評価すべき場合には、離婚時における解約返戻金相当額を明らかにし、これを財産分与の対象とすることが多いです。
Point2住宅ローンが残っている不動産の財産分与
財産分与時点における不動産の時価からローンの残元金を控除して、清算する金額を決定するのが一般的です。
その分与方法については、不動産を売却して住宅ローンを返済した残額を分与する方法、夫婦の一方が不動産を取得して、住宅ローンの返済を続ける方法などがありますが、後者の場合、住宅ローンの債務者でない者が、事実上住宅ローンの返済を引き受けたとしても、債権者である金融機関が債務者の変更に応じることはあまりありません。
オーバーローン(住宅ローンの残額が不動産の時価を上回る状態)の場合でも、婚姻生活中に負担して支払ったローン金額を財産分与として求めることが考えられますが、負債が上回る場合、不動産の価値はゼロであって積極財産は存在しないとして、認められていません(東京高裁平成10年3月13日決定)。また、夫婦間で債務の内部的負担割合を定めたとしても、それを債権者に対抗することはできず、当事者間の求償割合を定める以外の意味はありません。
Point3年金分割
対象となる年金
年金分割の対象となるのは、厚生年金と旧共済年金(いわゆる2階部分)に限られます。国民年金(1階部分)は年金分割の対象になりません。したがって、婚姻期間中、配偶者の仕事がずっと個人事業の場合には、年金分割の対象となる年金はありません。また、国民年金基金や、確定給付企業年金、確定拠出年金(3階部分)も年金分割の対象になりません。
合意分割と3号分割
平成20年4月1日以降婚姻し、かつ、その間ずっとサラリーマンの配偶者など3号被保険者であった場合には、合意による年金分割は必要ありません。相手方の合意無く、離婚した夫婦の一方の請求により、年金を分割することができます(3号分割)。これに対し、それより前に婚姻した場合で、平成20年3月31日以前に厚生年金と旧共済年金に入っていた期間がある場合には、合意による年金分割が必要です。
手続きの流れ
まず年金情報通知書を入手します。次に、離婚相手と按分割合(通常2分の1ずつ)を合意します。合意したら、元夫婦揃って年金事務所に行って、年金分割の改定請求をします。それができない場合には、公証人から証明された私署文書や、分割したことを記した公正証書によって一人で行うこともできます。年金分割手続きができるのは、離婚から2年ですので、ご注意下さい。
Q&A
Q
合意した財産分与の履行を確保する方法として、どのようなものがありますか?
A
履行勧告
財産分与義務者が調停や審判、判決において負った義務を履行しない場合、権利者は、家庭裁判所に、履行勧告を申立てることができます。この場合、担当調査官が調査の上、相手に対し自発的に履行するよう勧告してくれます。費用はかかりません。履行勧告に強制力はありませんが、裁判所からの勧告であるため、相手にプレッシャーがかかり、実効性があります。
履行命令
権利者の申立てにより、家庭裁判所が、相手方に対し、一定の期間内の履行を命ずる制度です。正当な理由なしに履行されない場合には、10万円以下の罰金が課せられます。
強制執行
調停調書や和解調書、判決、公正証書など債務名義に基づき、預貯金や給与の差し押さえをすることもできます。