役員等の責任追及訴訟

 

虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(役員等)が、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負いますが(会社法423条1項)、会社が役員等に対し、その責任を追求する訴訟を提起する場合には、通常の訴訟とは異なる手続きが必要となります。

 

令和3年3月1日施行の改正会社法により改正がなされた点もありますので、うっかり手続ミスをしないように、今回は会社が役員等に対し責任追及をする訴えを提起する場合の手続き等について、説明させていただきます。

 

なお、今回は株主代表訴訟については対象外とさせていただきます。

 

■責任追及訴訟において会社を代表する者


 

 

取締役の責任を追及する訴えについては、監査役が会社を代表します(386条1項1号)。

 

ただし、業務監査権限を有する監査役が置かれていない会社では代表取締役が会社を代表します。

 

また、委員会設置会社では、監査委員(訴えの相手方となる場合を除く)が会社を代表します(408条3項1号)。

 

■訴えの管轄


 

 

責任追及等の訴えは、株式会社(または株式交換等完全子会社)の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属しますので、それ以外の裁判所に訴訟提起することはできません(848条)。

 

 

■公告または株主への通知


 

 

株式会社は、責任追及の訴えを提起したときは、遅滞なく、その旨を公告し、または株主に通知しなければなりません(849条5項)。

 

株式会社が、株主から、責任追及の訴えを提起したとして、訴訟告知を受けたときも同様です。

 

ただし、公開会社でない株式会社の場合は、株主への通知で足ります(同条9項)。

 

これらは、会社と取締役との馴れ合い訴訟を防止するとともに、和解が適切に行われることを担保するものです。

 

 

■訴訟参加


 

 

原則として、株主又は株式会社は、共同訴訟人として、または当事者の一方を補助するため、責任追及訴訟に参加することができます(849条1項本文)。

 

 

■和解をする場合


 

 

令和3年3月1日施行の改正会社法により、株式会社等が、その取締役(監査等委員及び監査委員を除く)や元取締役の責任を追及する訴訟において和解をする場合には、次の者の同意を得なければならなくなりました(849条の2)。

 

・監査役設置会社の場合、監査役(監査役が二人以上の場合には、各監査役)
・監査等委員会設置会社の場合、各監査等委員
・指名委員会等設置会社の場合、各監査委員