マンションの管理・トラブル

マンションについて、こんなトラブルはありませんか?

マンションの管理・トラブル

マンション管理組合の皆様へ

管理組合の役員の皆様は、管理費や修繕積立金の滞納、騒音や異臭、ペットの問題など迷惑な入居者の対応、漏水や物損・人損事故への対応、建物・設備の瑕疵、管理会社との契約関係、総会運営、大規模修繕など様々な法的問題で頭を悩ましていることと存じます。
当事務所は、マンションの管理会社を含む複数の不動産業者や大手損保会社の顧問をしている関係で、マンション問題や損害保険の実務に精通しています。また、民暴委員や不当要求防止責任者講師の経験に基づき、ハードクレーマーにも臆することなく、迅速かつ適切に対応します。

マンションのトラブルに関する主なケース

Case1管理費・修繕積立金の滞納

管理費等の滞納が発生した場合には、できるだけ早い対応をし、未収金を増やさないようにすることが大切です。まずは、電話や書面による督促を繰り返し、滞納が3、4ヶ月に達した場合には、自宅訪問や、訴訟等法的手続きを取ることを示唆する内容の内容証明郵便による督促をすることになります。それでも滞納が続く場合には、支払督促や少額訴訟、高額な場合は通常訴訟の提起をし、回収を図ることになります。

管理組合が原告

法人化されていない管理組合でも、管理規約に基づいて運営されている場合には、一般的に「権利能力なき社団」に該当し、民事訴訟法上、原告になることが認められています。管理規約で理事長が管理者とされている場合には、管理組合の理事長が原告になることもありますが、実務では、管理組合が原告になることが多いようです。

総会決議の要否

標準管理規約(単棟型)60条3項のように、管理規約に、「理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる。」と規定されていれば、総会決議は不要で、理事会決議だけで、管理費等を請求する訴訟を提起することができます。他方、このような規定がない場合には、裁判実務上、総会決議が必要と考えられています。

専有部分が共有の場合

管理費等を滞納している専有部分が夫婦や親子の共有になっている場合には、共有者全員に対し請求することができ、共同被告として訴訟提起することができます。また、管理費や修繕積立金は、不可分債務と解されており(東京地裁平成25年11月13日判決)、共有持分に応じて分割された額しか請求できないのではなく、共有者それぞれに対し滞納額全額を請求することができます。

消滅時効

2020年4月1日に施行された改正民法により、管理費等の債権は、権利を行使できることを知った時から5年、又は権利行使できる時から10年で消滅時効にかかることになりました。通常、管理組合は、管理費の支払い時期の到来時に、権利行使できることを知っていることになりますので、滞納問題を長期間放置しないように気をつけましょう。

Case2理事の善管注意義務違反

善管注意義務

一般に、管理組合の役員と管理組合の法律関係については、役員を受任者とし、管理組合を委任者とする委任契約が成立しているものと解され、受任者(理事長その他の役員)は委任の本旨に従い善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負います(民法644条)。

【損害賠償】マンション管理について、理事や管理会社の善管注意義務違反を認められるケース

【損害賠償】マンション管理について、理事や管理会社の善管注意義務違反が認められないケース

理事長の解任が必須

管理組合が、理事長に対し善管注意義務違反等を理由に損害賠償請求する場合、その訴訟は、管理組合(または管理者)が原告となって提起する必要があります。裁判例上、組合員の1人(または一部)が原告となって、理事長に対し損害賠償請求訴訟を提起することはできないとされています(東京地裁平成4年7月16日判決、神戸地裁平成7年10月4日判決)。したがって、理事長に対し訴訟提起するには、まずその前提として、理事長を解任する必要があります。理事長は集会の普通決議で解任することができますが、理事は、組合員のうちから総会で選任し、その互選により理事長を選任する旨が定められているマンション管理組合においては、理事の互選により選任された理事長につき、理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができます(最高裁平成29年12月18日判決)。これが難しいような場合、その解任請求訴訟は、組合員1人でも提起することができます(区分所有法25条)。

他の理事に対する損害賠償請求

東京地裁平成27年3月30日判決は、会計担当理事Aが横領した事案につき、理事長が収支決算報告をすべき最終的な責任者であることに照らすと、Aが作成した収支決算報告書を確認・点検して適正に行われていることを確認すべき義務があったにもかかわらず、会計の報告につき、定期総会の直前にAから簡単な説明を受けるのみであって、預金口座の通帳の残高を確認することなく、また、会計監査役員に対し、預金口座の通帳を確認するなどの適正な監査をすべき指示を出したり、適正な監査をしているかを確認したりすることもなかったとして、理事長の損害賠償責任を認めています。

他方、管理規約上も実際の職務分担上も、管理組合の会計事務につき何らの権限も与えられていなかった副理事長の損害賠償責任は否定されています。

Case3管理規約違反

共用部分の無断利用

例えば、横浜地裁川崎支部昭和59年6月27日判決は、冷房屋外機及び配管を外壁に設置した行為につき、「区分所有法13条によれば、共有者は共用部分を用法に従つて使用することができるものとされているところ、壁面は個人に対する専用使用権及び特定の使用目的の設定されていない共用部分であり、空間地及び工作物等の設置されていない建物外壁として使用されていたものであるから、壁面の用法に従った使用とは右の状態を基本的に維持したまま使用することであると解するのが相当である。従つて、ここに冷房機及び配管のように第三者が容易に除去し得ないような構造物を設置し継続して使用することは、共用部分の用法に従った使用とはいえない。」、「団地のような集合住宅団地にあっては多数共有者間の異なる生活上の要請をどのような順序で、どのような範囲、方法で認めるか等を共有者間で協議し、合意を得て使用するのでなければ、混乱や不公平が生ずるであろうことは容易に予想しうるところであるから、調整的機能を目的とする使用であるとしても、共有者の一人が独自の判断で現状を変えるような使用をなすことは用法に従った使用とはいえないというべきである。」などと判示し、管理規約に違反するとして、その撤去を認めています。

迷惑行為に対する措置

騒音や振動等共同利益に反する行為をする者に対しては、その要件の充足度に応じて、その行為の差止めや、専有部分の使用禁止、区分所有権の競売、占有者に対する引き渡し請求をすることができます(区分所有法57〜60条)。

裁判例では、区分所有者の使用借人(娘)がベランダで、野鳩の餌付け・飼育を繰り返しており、おびただしい数の野鳩が飛来し、その糞、羽毛、羽音等により共同生活に著しい障害が生じている事案(東京地裁平成7年11月21日判決)、区分所有者からの賃借人(大工)が、気にくわない居住者に暴行脅迫行為を繰り返しており、訴訟係属後も配慮が全く感じられず、むしろ同様の行動を繰り返している事案(東京地裁平成8年5月13日判決)、区分所有者の使用借人(息子)が居住者の悪口を叫んだり、奇声、騒音、振動等を発し、21戸中少なくとも18戸の居住者がその被害を受けており、その状態が4年以上続いている事案(東京地裁平成17年9月13日判決)において、いずれも、建物の退去請求等が認められています。

なお、単なる隣人間での騒音や振動、プライバシー侵害等は、共同利益背反行為にはあたりません。この場合は、隣人間の損害賠償請求等で解決することになります。

Case4漏水事故

原因によって、損害賠償を負う者が異なる

漏水事故は、その原因が何かによって損害賠償請求の相手方が異なります。例えば、上階の住民が蛇口を閉め忘れて、階下への漏水が生じたような場合、上階の住民に対し、不法行為(民法709条)に基づき、損害賠償請求することはできますが、排水口(ヘアーキャッチ)の目詰まりがあったとしても、それは、取り外しできるもので土地工作物とはいえず、建物の所有者やマンションの管理組合に対し、工作物責任(同法717条)に基づく、損害賠償請求をすることはできません。

給排水管からの漏水の場合

また、給排水管の腐食や詰まりが漏水の原因の場合には、その漏水箇所によって異なります。漏水を起こした給排水管が専有部分内に存在する場合にはその専有部分の区分所有者が、共用部分に存在する場合には管理組合が、それぞれ工作物責任に基づき、損害賠償責任を負います。漏水が発生した給排水管が専有部分に該当するか、共用部分に該当するかについては、管理規約等に規定されていない場合、その給排水管が設置された場所、機能、点検、清掃、修理等の管理方法及び建物全体の排水との関連などを総合的に考慮して判断されることになります。

Case5組合役員を誹謗中傷する文書の配布

差止請求の可否

最高裁平成24年1月17日判決は、区分所有法57条に基づく差止め等の請求については、マンション内部の不正を指摘し是正を求める者の言動を多数の名において封じるなど、少数者の言動の自由を必要以上に制約することにならないよう、その要件を満たしているか否かを判断するに当たって慎重な配慮が必要であることはいうまでもないものの、マンションの区分所有者が、業務執行に当たっている管理組合の役員らをひぼう中傷する内容の文書を配布し、マンションの防音工事等を受注した業者の業務を妨害するなどする行為は、それが単なる特定の個人に対するひぼう中傷等の域を超えるもので、それにより管理組合の業務の遂行や運営に支障が生ずるなどしてマンションの正常な管理又は使用が阻害される場合には、同法6条1項所定の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たるとみる余地があると判示しています。
この事案は、注意を無視して、区分所有者が迷惑行為を繰り返し、刑事事件にまで発展した事案です。

夜のマンション

Q&A

Q

管理費等を滞納している組合員の氏名を公表することはできますか?

A

ペナルティやプレッシャーをかけることを目的として、掲示板や組合便りで滞納者の氏名を公表することは、自力救済行為であり、名誉毀損による不法行為が成立するおそれがありますので、すべきではありません。
また、総会においても、一般の組合員が知らせるべきは、滞納者数、滞納期間、滞納額や回収の見通しですので、滞納者の氏名の公表は避け、匿名にすべきでしょう。もっとも、広島高裁平成15年1月22日判決は、ペナルティを目的としない、総会における滞納者の氏名の公表について、名誉毀損(不法行為)の成立を否定しています。
他方、理事会において、滞納問題の対応を検討するにあたり、氏名を知ることは当然必要ですので、理事会内部での公表は認められます。

Q

管理費等を滞納している組合員に対する電気・ガス・水道等の供給を停止することができますか?

A

電気・ガス・水道の供給は、日常生活に必要不可欠なライフラインであり、これらを供給停止することは実質的に居室の使用ができなくなり、自力救済行為にあたり、不法行為が成立するおそれがありますので、すべきではありません。実際に、東京地裁平成2年1月30日判決は、給湯を停止された区分所有者と同居の夫に各30万円の慰謝料を認め、福岡地裁小倉支部平成9年5月7日判決は、水道の元栓を繰り返し閉められたり、嫌がらせ行為を受けた賃借人に対し、10万円の慰謝料を認めています。
なお、マンションによっては、水道光熱費を管理組合で一括契約しており、管理規約において、滞納者に対しては、電気・ガス・水道の供給を停止することができる旨定められている場合がありますが、たとえ、このような管理規約がある場合でも、供給停止が権利の濫用にあたり、不法行為となるおそれがありますので、すべきではありません。

Q

管理費等を滞納している組合員に対して訴訟提起する場合、弁護士費用を加えて請求できますか?

A

管理規約に、標準管理規約(単棟型)60条2項のように、「違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。」*旨の規定があれば、弁護士費用も加えて請求することができます(東京高裁平成26年4月16日判決等)。
これに対し、管理規約にこのような管理規約がない場合には、弁護士費用を加えて請求することはできません。管理組合が、管理規約ではなく、総会決議により、滞納組合員に対し弁護士費用を負担させるよう決議したとしても、そのような総会決議は無効です(東京高裁平成7年6月14日判決)。
*管理組合が実際に要した弁護士費用全額を負担させるという趣旨を一義的に明確にするためには、「管理組合が負担することになる一切の弁護士費用(違約金)」と定めるのが望ましいとされています。

Q

管理費等の滞納がある場合、管理会社に対し損害賠償請求することができますか?

A

管理会社は、管理組合に対し、管理委託契約に基づく善管注意義務を負っており、契約に定められた督促行為や、管理組合に対する報告を怠ったことにより、管理組合が管理費等を回収できなくなるなどの損害を被った場合には、管理会社に対し損害賠償請求できる場合もあるでしょう。
しかし、管理会社は、管理費等が支払われないことについて当然に結果責任を負うものではありません。管理委託契約に、一定期間督促をしても、滞納管理費等が支払われない場合には、管理会社の当該業務は終了することや、督促をしても回収できないことについて管理会社が責任を負わないことが定められていることもあり、管理会社が、管理委託契約に基づき適切に督促・報告をしている場合には、損害証責任を負いません。東京地裁平成18年7月12日判決も、このような場合に管理会社の責任を否定しています。

Q

理事会や総会の決議に基づくことですが、理事長が私的利益を図り、管理組合に損害を与えた場合、損害賠償請求できますか?

A

損害賠償請求できる可能性があります。裁判例で、「当該職務の遂行が総会又は理事会の決議に基づくものであったことは、賠償責任を免れる理由にはならない。私的利益を目的とすることを隠し、総組合員の利益を目的とすることを装って総会又は理事会の決議を得たからといって、善管注意義務の違反があることに変わりはないからである。」と判示したものがあります。善管注意義務違反が認められる典型例は、理事長が管理組合の総会決議等を得ることなく、その権限を逸脱して職務遂行をした場合です。しかし、このような場合だけでなく、形式的に総会決議が存在しても、私的利益を目的とする職務遂行である場合には、管理組合に対する善管注意義務違反に当たるとしています。詳しくは、こちら

Q

「立候補者が役員候補者として選出されるためには、理事会承認を必要とする」旨の管理規約は有効ですか?

A

判決は、成年被後見人等やこれに準ずる者のように客観的にみて明らかに管理組合の理事としての適格性に欠ける者については、理事会が立候補を承認しないことができるという趣旨であると解され、その限度で本件条項は有効であるが、理事会が上記の裁量の範囲を逸脱して、立候補を認めない旨の決定をした場合は、立候補者の有する人格的利益を侵害するものとして、違法性を有すると判示しています(東京高裁平成31年4月17日判決)。詳しくは、こちら

Q

理事長の解任を求める訴訟は、どのような場合に認められますか?

A

理事長(管理者)に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、単独で、その解任を裁判所に請求することができます(区分所有法25条2項)。「不正な行為」とは、故意に善管注意義務に違反し、区分所有者に損害を被らせる行為をいいます。また、「職務を行うに適しない事情」とは、心身の故障や長期の不在などにより、職務遂行に重大な影響がある場合です。
解任請求訴訟(形成の訴え)は、通常の民事訴訟手続きによりますが、理事長が職務を継続すると著しい損害が生じるおそれがあるなど緊急性を要する場合は、理事長の職務遂行停止および職務代行者選任を命ずる仮処分の申立てをすることができます(民事保全法23条2項)。

Q

マンションで民泊事業を行っている区分所有者がいますが、損害賠償請求することができますか?

A

旅館業法の脱法的な営業に当たる恐れがあるほか、住戸部分を不特定多数の実質的な宿泊施設として使用することを禁じる管理規約に明らかに違反するとし、鍵の管理状況、床の汚れ、ゴミの放置、非常ボタンの誤用の多発といった区分所有者の共同の利益に反する状況が現実に発生し、被告に対して注意や勧告等をしているにもかかわらず、被告があえて営業を止めなかったため、原告は弁護士に委任して本件訴訟をせざるを得なかったため、マンションにおける民泊営業は、区分所有者に対する不法行為にあたるとして、損害賠償を認めた裁判例があります(大阪地裁平成29年1月13日判決)。詳しくは、こちらをご参照ください。

Q

マンションの区分所有者が、共用部分である階段や通路の手すり部分に、管理組合の事前の了承なくペンキを塗布し、他と色合いの異なるものにしてしまいましたが、損害賠償請求することができますか?

A

できます。そのような行為をした区分所有者が、老朽化したマンションの破損を防止するために行ったものであり、保存行為として許容される旨主張したのに対し、管理規約によれば、共用部分の管理については管理組合がその責任と負担においてこれを行う旨を定め、これには「保存行為」も含まれると解されるから、個々の区分所有者は、共用部分の現状の維持を図る行為であっても、特段の緊急性がない限り、管理組合の了承なく、これを行うことはできないとして、不法行為に基づく損害賠償請求を認めた裁判例があります(東京地裁令和2年1月30日判決)。

Q

管理規約で専有部分を店舗として使用することを禁止できますか?

A

管理規約で、専有部分について、住宅以外の目的での使用を禁止するとか、一定の営業を禁止することは、マンション全体の維持管理や、共同生活上の秩序要請に基づくものである限り、原則として有効であると解されています。

Q

管理規約に、専有部分の店舗使用禁止を新設した場合、既存の店舗の利用を制限することができますか?

A

その規約の新設により「特別の影響」を受ける区分所有者の個別の承諾を得る必要があり(区分所有法第31条1項後段)、その承諾を受けていない限り、当該区分所有者は拘束されず、既存の店舗利用を制限されません。

最高裁平成9年3月27日判決も、住居としてのみ使用し得ることを定めた新規約について、「住戸部分を取得した区分所有者」につき規定した同条が(店舗として利用されていた)101号室に適用されるものか否かは規定上必ずしも明確でなく、仮にその適用があるとしても、同条の規定は、「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」に当たるから、当時の同室の所有者(会社)の承諾を得なければならないところ(建物区分所有法三一条一項後段)、同社は規約の改正に当たり白紙委任状を提出しているとはいうものの、これによって同社の個別的承諾を得たものとは認められず、いずれにせよ、同室の区分所有権を前所有者から売買により取得したにすぎない上告人は、右制限に拘束されることはないものというべきであると判示しています。

まずは相談することが
解決への第一歩となります。

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