下請業者との取引において、このようなことをしていませんか?
- 法令の定める事項が網羅された書面を交付していない。
- 商品等を受領してから60日以内に代金を支払っていない。
- 値引きや協賛金、歩引きなどとして、発注時に定められた金額から減額している。
- 瑕疵がないのに、既に受け取った商品等を返品している。
- 協賛金の支払いや不当な従業員派遣をさせている。
- 下請業者に責任がないのに、費用を負担せずに発注取り消しや内容の変更、やり直しをさせている。
それは、下請法に違反します。
Case1下請代金の減額の禁止
下請事業者の責めに帰すべき理由(瑕疵の存在、納期遅れ等)があるとして、受領拒否や、返品したり、手直しに要した費用を減じたり、商品価値の低下が明らかな場合に、客観的に相当と認められる額を減じるときは問題ありません。
しかし、親事業者が、このような下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、定められた下請代金の額を減ずることは下請法に違反します(第4条第1項第3号)。例えば、下請事業者との間に単価の引下げについて合意が成立し単価改定された場合、旧単価で発注されているものにまで新単価を遡及適用して下請代金の額を減じたり、消費税相当分を支払わなかったり、親事業者の客先からのキャンセル、市況変化等により不要品となったことを理由に下請代金の額を減じたりすることは下請法に違反し、違法です。
Case2不当な経済上の利益の提供要請の禁止
下請事業者が、「経済上の利益」を提供することが納入した物品等の販売促進につながるなど、提供しない場合に比べて直接の利益になるものとして、自由な意思により提供する場合には「下請事業者の利益を不当に害する」ものにはあたりません。
しかし、親事業者が自己の利益のために、下請事業者に対して、金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることにより、下請事業者の利益を不当に害すると下請法違反となります(第4条第2項第3号)。例えば、親事業者が自社の催事に対する協賛金の提供を下請事業者に要請し、協賛金を提供させていたり、下請事業者に対し、当該下請事業者に委託した取引以外の貨物の積み下ろしの役務提供を要請し、無償で積み下ろし作業を行わせていたり、自社で行う催事の抽選会において景品として使用するため、下請事業者に対し、無償で商品を提供させたりする行為は下請法違反になります。
また、下請事業者の金銭・労働力の提供が下請事業者の直接の利益につながることの合理的根拠を明確にしないで提供を要請することは、不当な経済上の利益の提供要請に該当するおそれがあります。
Q&A
Q
事前に契約書等の書面において、歩引きとして5%を下請代金の額から差し引く旨の合意を記載していても問題になりますか?
A
問題になります。下請法第4条第1項第3号は、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、親事業者かが下請事業者の給付に対し支払うべき代金(下請代金)の額を減ずることを禁止しており、歩引きとして5%を下請代金の額から減ずることについてあらかじめ合意し契約書等で書面化していても、問題となります。
Q
親事業者との合意が下請法に違反する場合、親事業者に対し損害賠償請求できますか?
A
親事業者と下請事業者の合意が下請法に違反している場合、下請業者の負担の程度、経済合理性の有無、合意に至る経緯等を考慮して、暴利行為ないし優越的地位の濫用に当たるなど、下請法の趣旨に照らして不当性の強いときには、合意が公序良俗に違反して無効となることがあり得ますが、そうでないときには、各条項に抵触するということだけで直ちに合意が無効となるものではなく、私法上有効であり、不法行為に基づく損害賠償請求はできません(札幌地裁平成31年3月14日判決、東京地裁昭和63年7月6日判決)。
Q
下請業者との間で電子契約を利用したり、発注書をPDF添付で送ることはできますか?
A
親事業者は、発注に際して、直ちに、下請事業者に対して、給付の内容、下請代金の額、支払期日等が記載された書面を交付する義務を負っていることから(下請法3条)、「書面交付」に代えて、電磁的方法を利用するためには、下請事業者の「承諾」が必要になります(同条2項)。この承諾自体は、書面ではなく、電磁的方法により取得することも認められています(同施行令2条)。
また、電子契約の利用・導入に関し、下請事業者にコストが発生する場合は、利用等を強制することができず、下請業者に任意に選択してもらうことが望ましいです。
