不動産問題

  • cat4

    2015.12.09

    退去時、賃借人は通常損耗についても、補修費用を負担しなければなりませんか。

    建物の賃借人は、退去時に建物を原状に回復して返還する義務を負いますが、通常の使用による損耗については、既に賃料の中に含まれており、その修理原状回復費用を負わないのが原則です。

     

    しかし、家主の側からすれば、畳や、床、壁紙など新品状態の方が新しい賃借人を得やすいことから、一方的に、通常の使用による損耗分を含めて修理原状回復にかかった費用を敷金から差し引くことがあり、これが紛争の火種になります。しかし、このような家主の主張が認められるには、その旨の特約がなければなりません。

     

    この点、最高裁平成17年12月16日判決は、「建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約(通常損耗補修特約)が明確に合意されていることが必要である」旨判示しています。

     

    そして、上記最高裁判決の事案では、契約書において負担区分表に基づき補修費用を負担することが定められており、その負担区分表には、襖紙・障子紙の汚損(手垢の汚れ、タバコの煤けなど生活することによる変色を含む)・汚れ、各種床・壁・天井等の仕上材の生活することによる変色・汚損・破損については、いずれも退去者(賃借人)の負担とされていましたが、これら文言自体からは、通常損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえないなどと判示して、通常損耗補修特約の成立を否定しました。

     

    また、下級審判決において、「小修理は賃借人の負担において行う。賃借人は、故意過失を問わず、本件建物に毀損、滅失、汚損その他の損害を与えた場合は、賃貸人に対し賠償義務を負う。」(名古屋地裁平成2年10月19日判決)とか、「賃借人は、本契約が終了した時は、賃借人の費用をもって本物件を当初契約時の原状に復旧させ、賃貸人に明け渡さなければならない。」(大阪高裁平成12年8月22日判決」といった契約条項は、通常の使用による損耗・汚損の損害を賃借人が賠償又は費用負担することを定めたものではない旨判示されています。

     

    では、どのような特約であれば、通常損耗も含めて賃借人が費用を負担する特約として有効かというと、「賃借人が本件建物を明け渡すときは、賃借人は畳表の取替、襖の張替え、クロスの張替、クリーニングの費用を負担する」という特約(しかも、この特約は、他の条項(黒の不動文字)と異なり、赤の不動文字で記載されていた)については、文理解釈上、自然損耗を含まない趣旨であると解することは困難であるなどとし、通常損耗を含めて賃借人が負担すべきとした下級審判決(東京地裁平成12年12月18日判決)が存在します。

     

    霞ヶ関パートナーズ法律事務所
    弁護士  伊 澤 大 輔
    ☎ 03-5501-3700
    https://izawa-law.com/

     

     

     

  • lawyer

    2015.12.09

    賃借建物の原状回復義務の範囲

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    建物の賃借人は、退去時に建物を原状に回復して返還する義務を負いますが、通常の使用による損耗については、既に賃料の中に含まれており、その修理原状回復費用を負わないのが原則です。

     

    しかし、家主の側からすれば、畳や、床、壁紙など新品状態の方が新しい賃借人を得やすいことから、一方的に、通常の使用による損耗分を含めて修理原状回復にかかった費用を敷金から差し引くことがあり、これが紛争の火種になります。しかし、このような家主の主張が認められるには、その旨の特約がなければなりません。

     

    この点、最高裁平成17年12月16日判決は、「建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約(通常損耗補修特約)が明確に合意されていることが必要である」旨判示しています。

     

    そして、上記最高裁判決の事案では、契約書において負担区分表に基づき補修費用を負担することが定められており、その負担区分表には、襖紙・障子紙の汚損(手垢の汚れ、タバコの煤けなど生活することによる変色を含む)・汚れ、各種床・壁・天井等の仕上材の生活することによる変色・汚損・破損については、いずれも退去者(賃借人)の負担とされていましたが、これら文言自体からは、通常損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえないなどと判示して、通常損耗補修特約の成立を否定しました。

     

    また、下級審判決において、「小修理は賃借人の負担において行う。賃借人は、故意過失を問わず、本件建物に毀損、滅失、汚損その他の損害を与えた場合は、賃貸人に対し賠償義務を負う。」(名古屋地裁平成2年10月19日判決)とか、「賃借人は、本契約が終了した時は、賃借人の費用をもって本物件を当初契約時の原状に復旧させ、賃貸人に明け渡さなければならない。」(大阪高裁平成12年8月22日判決」といった契約条項は、通常の使用による損耗・汚損の損害を賃借人が賠償又は費用負担することを定めたものではない旨判示されています。

     

    では、どのような特約であれば、通常損耗も含めて賃借人が費用を負担する特約として有効かというと、「賃借人が本件建物を明け渡すときは、賃借人は畳表の取替、襖の張替え、クロスの張替、クリーニングの費用を負担する」という特約(しかも、この特約は、他の条項(黒の不動文字)と異なり、赤の不動文字で記載されていた)については、文理解釈上、自然損耗を含まない趣旨であると解することは困難であるなどとし、通常損耗を含めて賃借人が負担すべきとした下級審判決(東京地裁平成12年12月18日判決)が存在します。

     

  • lawyer

    2015.12.07

    事務所近くのおすすめランチ③ バルタパス「ポークソテー」

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    当事務所からみて、虎ノ門の交差点のはす向かいにあるエリア(三菱東京UFJ銀行虎ノ門支店の裏あたり)はランチ激戦区です。小さいながらも、リーズナブルで美味しそうなお店がたくさんあり、今日は何を食べたい気分か、予めあたりを付けておかないと、目移りしてしまって、路地をぐるぐると回りかねません。

     

    先日、出先からの帰りに久しぶりに、このエリアに寄ったのですが、一本路地を入ったところで、洋食ランチのいいお店を見つけましたよ!「バル タパス」です。 

     バルタパスのポークソテー

    写真は、ほんのりトマトソースの酸味がきいたポークソテー。付け合わせのマッシュポテトも滑らかで、いい感じでした。

     

    これに、ライス、サラダ、スープが付いて、たったの900円。もっとも、それは、ポークソテーがその日のスペシャル(ランチ)だったからで、そうでない日は、サラダ、スープ がそれぞれ+100円ずつで付けられるというシステムのようです。

     

    他にも、タンシチューなどがあって、他のお客さんが食べていたハンバーグも洋食屋さんの大道を行くハンバーグで美味しそうでした(人が食べているものって、つい気になりますね。)。今度、食べてみようihi

     

    洋食屋と書きましたが、店名からも明らかなように、夜は、バルとして営業しているようです。

  • lawyer

    2015.12.03

    SNSで、こんなやりとりをすると、利用を停止されてしまう。

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    判例雑誌を読んでいたら、こんな裁判例(東京地裁平成27年4月8日判決)が目に止まりました。

     

    事案は、女性がソーシャルネットワーキングシステム(SNS)のミクシィのサイトに、あるイベント(リアル脱出ゲーム)の不要なチケットがあったら、譲り受けたい旨の書き込みをしたところ、男性からチケットがある旨のメッセージを受け取り、都内で会う約束をし、自らのメールアドレスや携帯番号を連絡するメッセージのやりとりをしたところ、ミクシィの運営事務局から、禁止事項である「面識のない異性との出会い等を目的として利用する行為」に該当するとして、自らのアカウントの利用を停止されてしまったため、女性が、ミクシィに対し、引き続き自らのアカウントを使ってサービスをさせることや損害賠償を求めて、提訴したというものです。

     

    女性側は、裁判において、上記禁止事項は、男女交際を主たる目的とする行為を禁じるもので、物品の受け渡しなど主たる目的が男女交際以外にある場合には、この禁止事項に該当しない、女性は、男女の指定なしにチケットの譲り受けを申し入れ、これに応じたのがたまたま男性であったにすぎないなどと主張しました。

     

    しかし、裁判所は、当該禁止事項は、その文言上、男女間の交際を目的とする出会いのみに限定して禁止する定めとは認められない。その趣旨については、面識のない男女が出会って交際等の関係に至ることが助長されるような投稿を禁ずる点にあると解する余地があるものの、投稿自体から男女間の交際を直接の目的とすることが明らかな行為のみを禁止するのでは、上記の趣旨を実効あらしめることは困難であり、上記行為にとどまらず、「面識のない異性との出会い等を目的として利用する行為」を対象とし、これに該当する行為を禁じているものと認められる旨判示して、女性側の請求を棄却しました。

     

    なお、投稿の削除にあたっては、ミクシィから、女性に対し、3回警告文が送られていたようです(女性側は、そのような警告文は受け取っていないと主張しており、これについては争いがあります)。

     

    この判決に対しては、女性側から控訴されており、その結果については分かりませんが、皆さんも安易な投稿により、アカウントの利用を停止されないよう注意して下さい。

  • lawyer

    2015.11.30

    中野 とり★パニの「ローストチキン」

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    このところ、仕事の関係で何度か中野に行っていたのですが、駅から中野ブロードウェイに向かって伸びるサンモール商店街の向かって右側の路地裏には、数多の飲食店が所狭しと建ち並ぶ魅惑のラビリンスが広がっていることを、皆さんご存知ですか。

     

    焼肉屋や、焼鳥、やきとんの大衆居酒屋が多い印象ですが、その他にも、イタリアンやら、洋食、中華、割烹料理のお店など、ヴァリエーション豊富で、とにかく、どこも安くて美味しそう!というのが共通点です。何度も、行きつ戻りつして、今日は何を食べようか迷ってしまいます。

     

    先日は散々悩んだ末、「ローストチキン」が名物の「とり★パニ」というお店に入ってみました。お一人様でも、4分の1サイズからのローストチキンを注文できるのが嬉しい限りです。是非、ローストした野菜とのセットを注文されることをお勧めします。仕上げに、自家製のあられを振りかけてもらって食べるのですが、これがいいアクセントになっていました。ただ、撮ったローストチキンの写真がピンぼけで・・・(・∀・;)

     

    代わりといってはなんですが、他に注文したチーズ豆腐なるものも、絶品でしたよ。チーズ風味の豆腐の上に、ハチミツがかかっていて、これをクラッカーの上に載せながら食べるのですが、食べ応えのあるレアチーズケーキという食感でした。

    チーズ豆腐

     

     

     

     

  • cat5

    2015.11.30

    過払い金の消滅時効

    ●過払い金の消滅時効はいつから進行するか?

     

    過払い金の消滅時効は、取引が終了したとき、すなわち、最後に借入ないし返済をしたときから進行するというのが判例です(最高裁平成21年1月22日判決)。

     

    但し、この判例は、「過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引」に関してのみ、該当するということについて注意が必要です。このような取引においては、取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害になるというべきであり、過払金返還請求権の行使を妨げるものであるから、消滅時効も進行しないというのがその理屈だからです。

    最初に継続的な金銭消費貸借契約が締結され、一定の限度額の範囲内で、何度でも借入をすることができる一般的な消費者金融からの借入では、最終取引日から消滅時効が進行すると考えてよいでしょう。

     

    これに対し、継続的な金銭消費貸借取引ではなく、1回の貸付に対し返済がなされているにすぎない場合には、過払金が発生する度に、その都度、消滅時効が進行すると考えられます。他の期限の定めのない債権と同様に、権利発生時から権利行使が可能であり、その行使を妨げる法律上の障害もないからです。

     

    ●過払い金の消滅時効期間は、5年か10年か?

     

    10年とするのが判例です(最高裁昭和55年1月24日判決)。

     

    商人間の貸し借りにより発生した過払い金には、商事時効である5年(商法522条)が適用されるようにも思えますが、上記判例は、「利息制限法所定の制限をこえて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権は、法律の規定によって発生する債権であり、しかも、商事取引関係の迅速な解決のため短期消滅時効を定めた立法趣旨からみて、商行為によって生じた債権に準ずるものと解することもできないから、その消滅時効の期間は民事上の一般債権として民法167条1項により10年に解するのが相当である。」と判示しています。

     

    霞ヶ関パートナーズ法律事務所
    弁護士  伊 澤 大 輔
    ☎ 03-5501-3700
    izawa-law.com/

     

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    2015.11.20

    過払金の消滅時効

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    ●過払い金の消滅時効はいつから進行するか?

     

    過払い金の消滅時効は、取引が終了したとき、すなわち、最後に借入ないし返済をしたときから進行するというのが判例です(最高裁平成21年1月22日判決)。

     

    但し、この判例は、「過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引」に関してのみ、該当するということについて注意が必要です。このような取引においては、取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害になるというべきであり、過払金返還請求権の行使を妨げるものであるから、消滅時効も進行しないというのがその理屈だからです。

    最初に継続的な金銭消費貸借契約が締結され、一定の限度額の範囲内で、何度でも借入をすることができる一般的な消費者金融からの借入では、最終取引日から消滅時効が進行すると考えてよいでしょう。

     

    これに対し、継続的な金銭消費貸借取引ではなく、1回の貸付に対し返済がなされているにすぎない場合には、過払金が発生する度に、その都度、消滅時効が進行すると考えられます。他の期限の定めのない債権と同様に、権利発生時から権利行使が可能であり、その行使を妨げる法律上の障害もないからです。

     

    ●過払い金の消滅時効期間は、5年か10年か?

     

    10年とするのが判例です(最高裁昭和55年1月24日判決)。

     

    商人間の貸し借りにより発生した過払い金には、商事時効である5年(商法522条)が適用されるようにも思えますが、上記判例は、「利息制限法所定の制限をこえて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権は、法律の規定によって発生する債権であり、しかも、商事取引関係の迅速な解決のため短期消滅時効を定めた立法趣旨からみて、商行為によって生じた債権に準ずるものと解することもできないから、その消滅時効の期間は民事上の一般債権として民法167条1項により10年に解するのが相当である。」と判示しています。

     

     

     

  • lawyer

    2015.11.04

    世界三大夜景 長崎「稲佐山」

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    先日11月2日(月曜日)に、民暴長崎大会が開かれました。

     

    前夜には、民暴大会では毎回恒例となっている東京弁護士会民暴委員会の懇親会が、卓袱(しっぽく)料理の老舗「青柳」で開催されました。美味しい料理に舌鼓を打ちながら、日本酒も振る舞われ、みんないい感じとなり、いつもならそのまま二次会に突入するところですが、今回は、稲佐山に移動しての夜景見学という趣向が凝らされていました。

    稲佐山の夜景

     これは素晴らしかった!

    眼下に長崎の街の灯りが広がり、空気も澄んでいて、世俗のことを自然と忘れ、新鮮な気持ちになりました。長崎の稲佐山が、香港、モナコと並ぶ、世界三大夜景の一つに選ばれたのも納得です。

     

    長崎の街はとても情緒がありました。大会当日、早い飛行機で帰ってしまい、街中をゆっくり散策する時間をとることができなかったのが非常に残念です。

     

  • lawyer

    2015.10.28

    キャリーバッグを曳いて歩く場合には、ご注意を

    霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。

     

    何だか鉄道のマナー広告のようなタイトルになってしまいました。というのも、鉄道の駅構内において、被告の曳いていたキャリーバッグが原告の足に当たって、原告がつまずき、骨折等の傷害を負ったという事案につき、100万円強の損害賠償請求を認めた裁判例(東京地裁平成27年4月24日判決)が目にとまったからです。

     

    そもそも当該事案では、原告の転倒の原因(キャリーバックがぶつかったのか否か)についても争われましたが、裁判所はぶつかったことを認定した上で、「歩行者が、駅構内のような人通りの多い場所でキャリーバッグが他の歩行者の歩行を妨げたり、それに躓いて転倒させることがないよう注意すべき義務を負うところ、被告は、上記注意義務に違反して歩行中に曳いていた本件キャリーバッグを対面歩行中であった原告の足に衝突させ」たなどと判示し、損害賠償責任を認めています。

     

    このような事故は、誰でもうっかり引き起こしかねません。通行人の多い場所では、キャリーバッグを自分の身体の後ろで曳くようなことはせず、身体の前に持ってきて、まわりに注意しながら、押すしかなさそうですね。

     

    なお、上記判決は、「他方、被告においても、歩行中は前方及び足下に注意し、特に駅構内のような通行人の多い場所では、対向の歩行者が大量の荷物を持っていたり、キャリーバッグを曳いていることは当然予測できることであるから、原告においても、本件事故について一定の過失があることを否めない。」と判示して、25%の過失相殺を認めています。

     

    これは、当該事故の態様及び原告が高齢(事故時、88歳)であることなどを総合考慮した上でのことですので、被害者が若年の場合には、被害者の過失割合はより高くなるでしょう。

まずは相談することが
解決への第一歩となります。

トラブルを抱え、鬱々とした日々を過ごしてはいませんか?

当事務所はトラブルに即時介入し、依頼者の盾となり、ストレスフルな日々から解放します。

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